『くすりの科学知識 (ニュートン別冊) 』2017/11/16
薬のしくみについて、イラストや写真で総合的に分かりやすく解説してくれる本(ニュートン別冊)です。
まず、すごく勉強になったのが、冒頭近くの記事「薬はどうやって患部に届くのか?」。
飲み薬の場合は、薬を飲むと、1)薬の有効成分は、消化されることなく小腸から吸収され、2)吸収された薬はまず肝臓に入り、その一部は分解されて効果を失い、3)肝臓を抜けた薬は、大静脈から心臓に入り、全身へと送られて、4)血管のすき間を通り抜け、全身の細胞に行き渡るのだそうです。
「肝臓は、外から入ってきた物質の分子の形をかえ、「解毒」する働きを持つ。人体にとっては毒も薬も同じく異物である。そのため、薬の一部は分子の構造を変えられ、いきなり効果を失ってしまうのだ」そうです。大事な働きをしている肝臓ですが、薬にとっては困った存在なのかもしれません。飲み薬の場合は、「基本的に薬は患部だけに届くのではなく、全身を巡っているのだ」とか。
そして「注射薬は飲み薬とことなり、すぐに静脈に入り、全身を巡る。そのため、一気に体の中の薬物濃度が上がり、ただちに効果が現れる。しかし、薬物は短時間で肝臓で分子の形に変えられ、急速に効果を失っていくという特徴がある。」
「一方、貼り薬の場合は、薬物は貼り薬の近くの毛細血管から吸収され、全身に広がっていく。貼り薬は、吸収速度を調整しやすいという特徴があるため、長い間、効き目を持続させられる」のだそうです。
薬は患部以外には邪魔なものでしかないので、副作用をおさえるためにも、患部だけに届けられるといいなと思います。そういう意味では、飲み薬や注射という形よりも、「貼り薬」の方が良いのかもしれないなー、と感じました。「貼り薬」っていうと、肩こりや筋肉痛をおさえるための鎮痛消炎剤しか思いつかなかったけど、お腹に貼る胃腸薬とか、喉に貼る咳止めとかがあったらいいのかも。
また意外だったのが、「薬の危険な飲み合わせ」。降圧剤とグレープフルーツジュースの組み合わせが良くない(血圧低下作用が強まる)ことは知っていましたが、コーヒーや納豆が良くない働きをすることもあるそうです! 気管支炎治療薬をコーヒーで飲むと、不整脈などを起こすことがあり、納豆のビタミンKは血液を凝固させる働きをもつたんぱく質をつくらせるため、抗凝固薬を飲んでいる人が納豆を食べると薬の効き目が弱まるのだとか……納豆はすごく「健康に良い」イメージがあったのですが、薬との食べ合わせには注意が必要だったんですね。
というように、この本はいろいろな意味で参考になったのですが、実は、私自身は「出来る限り薬は飲まない」よう心がけています(汗)。その理由は、1)薬の副作用が怖い、2)軽い病気で薬を飲んでいると、いざというときに効かなくなりそうな気がする、からです。以前はちょっと風邪気味かなーと感じた時には、用心のために早めに風邪薬を飲んでいたのですが、一般人向けの医学や生理学の本を読むようになってからは、「用心のために」薬を飲むのは間違っていると考えるようになり、予防のためには薬を飲むよりも体を鍛えておくようにしようと、日常的に運動をするように心がけるようになりました。そのせいか、以前よりずっと健康になり、風邪をひく頻度も減ったように思います。
「薬」には必要以上に(?)警戒心を抱いていた私ですが、この本を読んで、これからの(未来の)薬は、今よりずっと効果的になる上に危険性も少なくなりそうに感じて、「薬」に希望がもてるようになりました。この本の「2 創薬の世界」では、「副作用を減らす」ための試みとして、「患部だけではたらくように薬を設計する」、「抗がん剤をミクロのカプセルに詰め、がん細胞に届ける」など、さまざまな工夫が進められていることや、個人個人の遺伝情報を調べて、その遺伝情報から薬の効き具合や副作用、投与されるべき薬の量などを予測しようとする「オーダーメイド医療」、「iPS細胞を用いた創薬研究」、「スパコン「京」を使って薬のタネを探す「IT創薬」」、さらには、「ビッグデータから生まれる新たな医療」など、最新技術を駆使した創薬が多数紹介されていたからです。
薬に関するいろいろな知識を、豊富なイラストで分かりやすく学べる本でした。巻末には「4 薬の事典」として、「解熱鎮痛薬」「片頭痛の薬」「肩こり・腰痛・筋肉痛の薬」…などなどについての簡単な解説もあります。薬に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。