『紙の科学 (B&Tブックス―おもしろサイエンス)』2011/10/1
紙の機能研究会 (著), 半田 伸一 (監修)

紙の歴史・製造方法・機能などを総合的に知ることが出来る本です。
紙には大きく分けて、「記録」「吸収」「包装」という三の機能がありますが、この本では、「紙の基礎知識」の紹介の後、これらの機能別に、紙に関して詳しく解説してくれます。内容は次の通りです。
第1章 紙っていったいなんだろう?(紙とは「植物繊維を漉いたもの」)
第2章 紙の機能その1(包装に使われる紙:段ボールなど)
第3章 紙の機能その2(いろいろモノを吸収する:ティッシュペーパーなど)
第4章 紙の機能その3(いろいろな意思、文化を記録する:新聞紙など)
第5章 これから紙はどうなっていくのだろう?(ペーパーレス時代と紙の存在、古紙など)

製造方法などもかなり詳しく解説されていて、紙の参考書としてとても役に立つと思います。「紙」についてはいろいろ知っているつもりでしたが、次の「羊皮紙の作り方」などはごく簡単にしか知らなかったので、とても参考になりました。少し長いですが、参考までに引用させていただきます。
「ヨーロッパで長く使われてきた皮紙、とくに紀元前から作られていた羊皮紙の作り方は、12世紀のラテン語の文献に記されています。それによると、まず、山羊の原皮を水に一昼夜浸した後、汚れが出なくなるまで水で洗います。それを、水と消石灰をかき混ぜた水槽に、皮の毛がついた皮を外側にして8日間浸します。その間、1日2~3回、棒で皮を動かしてかき混ぜます。8日後に皮を取り出して、毛を剃ります。水槽には、新しい水と消石灰を入れてかき混ぜ、再びその中に皮を入れ、8日間浸します。その間1日1回はよくかき混ぜます。皮を取り出し、水が濁らなくなるまでよく洗い、綺麗な水の入った桶に入れて2日間浸します。そして、皮を取り出して、紐で枠に張り付け、乾かします。乾いたとこでナイフなどで皮を削り、それを2日間日陰で乾かします。さらにそれを湿らせて、肉側を軽石の粉で磨き、2日間晒しておき、再度湿らせて、同じように磨きます。それを水で濡らして、紐が均等な力が加わるようにきつく張り付け乾かして、完成です。」
……こんなに手間がかかるものだったんですね!
ところで、この本では紙の歴史として、「中国での紙の歴史は、紀元前141年以前とされています。これは、1957年に中国の西安市郊外の遺跡から発見された「はきょう紙」と名付けられたモノによってそう考えられました。しかし、これは「繊維であっても漉いたものではなく、文字が書けるほどのものではないため、紙ではない」とされています。」として「蔡侯紙」を「書写材料としての歴史上初めての紙」と紹介していますが、『紙の歴史』によると「紀元前150年頃の地図が描かれた世界最古の紙・放馬灘紙(ほうばたんし)が中国の墓から発見され、この他にも前漢時代の紙がいくつか発見されている。」だそうです。
さて、ふだん何気なく使っている紙ですが、「紙」が果たしている役割って本当に多いんですよね! もしも紙がなかったら、生活がどんなに不便になるかと考えてみて……ちょっと、ゾッとしてしまいました。紙の三大機能「包む」「吸う」「記録する」の中で、実は「吸う」という機能をあまり重視していなかったのですが(汗)、もしもトイレット・ペーパーがなかったら、と想像してみたら、もしかしたら「吸う」機能が一番重要なのかも……。
これからも「紙」を大切に使っていきたいと思います。とても参考になる本ですので、紙に興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆