『倒壊させてたまるか: ゼロからのマンション再生』2018/4/25
本多 伸行 富山 義則 (著)

素人のマンション管理組合理事長の富山さんが直面した「マンション再生」奮闘記です。
持ち回り制で、2012年の春に、突然、マンション管理組合の理事長になってしまった富山さん。「マンション管理会社が何でもやってくれるので大丈夫。」と、気楽なものだったはずの理事長の仕事は、あることをきっかけに、あっと驚くほど大変な仕事になってしまいました。
その「あること」とは、「マンションの耐震診断」。東京都文京区小石川にあるマンション前の春日通が、東京都から特定緊急輸送道路に指定されていて、耐震診断が義務づけられているため、前の理事長が都の補助金を使って耐震診断を申し込んでいたのです。
その結果は……「震度6強の地震がくると倒壊、崩壊する恐れあり」。
マンションは昭和47(1972)年の建築。昭和59(1981)年に改正された新耐震基準の前に建てられていたので、今の基準には合わないそうです。しかも建て替える場合も、「単独で建て替えると日影規制もあり現在の床面積の3分の1の建物しか建てられない」のだとか。
こうして、マンションの再生に向けた戦いが始まりました。この本には、この間に発生した問題が克明に記録されています。しかもなんと「耐震診断書の抜粋」、「建替えと耐震補強・大規模修繕の比較検討」、「耐震補強案」、「建替事業方式」、「概算費用の推移」、「各世帯自己負担額(試算)」などの資料まで掲載されています。なかでも、すごく参考になると思われるのが、「所有者アンケート」の内容。マンション所有者に、再生に向けての考えを問うものなのですが、その全文と思われる詳しい内容が掲載されています。老朽化しつつあるマンションはすごく多いと思うので、自分のマンションの再生を行うときに、これらの資料はすごく実践的に役に立ちそうな気がします。
それにしても、マンションの再生って、本当に想像以上に大変なんですね! 耐震補強であれ建替えであれ、ものすごいお金がかかるし(一時的に住めなくなる場合は、その間の住居の費用や転居費用も)、住民の年齢や事情もそれぞれなので、意見の食い違いが起こるのは当然だとは思いますが……こんなに時間や費用がかかるものだとは! 関係者のみなさんの苦労が偲ばれます……。耐震診断が出たのが2011年。その後、いろいろな努力の末に、マンションの解体が開始したのは、なんと2017年でした。
それでも、このマンションは文京シビックセンターの目の前。地下鉄の駅4本が徒歩5分以内でJRも徒歩10分という超好立地にあり、さらに北側の土地を購入できたことで、旧マンションの54戸から100戸へと2倍の部屋数を作ることが出来たので、一般のマンションよりも有利な条件で再生できたような気がします。もしかしたら普通のマンションだと、さらに大変なのかもしれません(汗)。
この本は、マンション管理組合の理事長ご自身(持ち回り制なので途中で他の人に交代していますが、この再生には最後まで関わっています)が、直面した問題について赤裸々に綴ってくれているので、いろんな問題とその対処をリアルに知ることが出来て、凄く参考になりました。マンションを所有している方は、ぜひ読んでみてください。