『初学者のための 機械の要素(第4版)』2023/12/4
真保 吾一 (著), 長谷川 達也 (著)

 初学者に向けた「機構の基礎知識」をまとめた名著の改訂版です。1964年に初版が刊行されて以来、工業系教育機関、工業系技術者から好評を得て、通算60刷、累計6万部を超えている本で、初めて「機械の要素」を学ぶ工業系の学生さん、工業系の設計・製作に従事する若手技術者の方々のための入門書。内容は次の通りです。
1章 機械と機械要素
2章 結合用機械要素
3章 運動伝達用機械要素
4章 運転制御用機械要素
5章 流体用機械要素
6章 回転体
7章 自動制御
練習問題解答・解説
索引
※なお本書籍は、理工学社から2003年に発行されていた『初学者のための機械の要素(第3版)』(ISBN978-4-8445-2532-5)を、オーム社から改訂第4版として、判型と書名を変更して発行するもので、オーム社からの発行にあたっては、理工学社の版数を継承して書籍に記載している、とのことです。
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「1章 機械と機械要素」によると、機械の持っている性質は次の通りだそうです。
1)機械は、ほかから加えられた力によって、たがいに運動し得るいくつかの部品を組み立てたものである。
2)各部品が行なう運動は、ある限定された一定の運動であって、任意な運動ではない。
3)各部品には充分な強度がある。
4)各部品の運動によって、与えられたエネルギー(熱や電気などがもっているような、仕事をすることができる勢力)を有効な仕事に変える。
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 さて『初学者のための 機械の要素(第4版)』というタイトルだったので、これは一般向けの機械の入門書なのだろうと思ったのですが、「初学者」はただの一般人ではなく、この本は「初めて機械について学ぼうとする方々や、学生諸君、その他現場の実務に携わっておられる方々の参考」として書かれたもので、「これから専門家になろうとする」人向けの本でした。そのため内容はかなり専門的なもので、ただの工作好き一般人には「過ぎた内容」ではありましたが、機械を構成する要素について詳しく知ることが出来て勉強になりました。
 例えば、「2章 結合用機械要素」では、ねじやボルト、ナットなどについて詳しく知ることが出来たのですが、なんと「ねじ山の形の種類」だけでも、次の4種類があるそうです。
1)三角ねじ:ねじ山の断面形が三角形で、もっとも多く用いられている。戻りにくいので、主に締め付け用として用いられる。
2)角ねじ:ねじ山の断面形が四角形。摩擦抵抗が少ない。
3)台形ねじ:ねじ山の断面形が台形。とくに力がかかるところの運動伝達用として用いられる。
4)管用ねじ:主としてガス管などに用いられる。
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 ……ねじ山の形で機能(特性)に違いがでるんですね。ホームセンターに行くと驚くほどたくさんの種類のねじが売られていますが、サイズの違いだけでなく、山の形もこんなに違っていたとは……。
 また次のような役に立つ豆知識も書いてありました。
「ねじをはずしても部品がくっついて離れにくいときは、少しずつゆすりながら、場合によっては木づちなどで軽くたたいてはずす。ねじが錆びついているときは、ガソリン・石油などを注いでから、ハンマーで軽くたたいてねじをゆるめればよい。」
 ……なるほど。家具や機械のちょっとした不具合を修理するとき、ねじが固くて離れにくいことがよくありますが、木づちで叩くと離れやすくなるんだ……。
 また工作好きとしては、「クラッチ(回転中の2軸の結合を解いたり、また結合したりする着脱式軸継手)」などが気になります。クラッチにも、次のような4種類があることを知りました。
1)かみ合いクラッチ:2軸の軸端に凹凸またはつめのある器具を取り付け、一方の軸の部品はすべりキーによって軸方向に移動できるようにし、クラッチ寄せで移動させてかみ合わせるもの
2)摩擦クラッチ:原軸側と従軸側の両方を押し付けて、その間の摩擦力によって運動を伝えるもの
3)フリーホイール:クラッチの一種で、原軸から従軸に回転を伝える場合に、軸が一定の回転方向に回転するときは動力を伝えるが、反対の方向に回転するときは、継手が解けて動力を伝えない。
4)流体クラッチ:原軸と従軸との間に油などの流体を入れて、原軸の回転がある程度大きくなったとき、流体の圧力によって2軸を結合させ、回転が小さくなって圧力が減少したとき、結合が解かれるようにしたもの。(回転の始動時や終動時に生じる衝撃を緩和できる)
 ……流体クラッチなんてものがあるんですね……。
『初学者のための 機械の要素(第4版)』……機械を構成する要素(ねじ、歯車、カム、軸受など)や、これらが実際に応用されている各種の機械、その機構についての基礎知識を総合的に解説してくれる本で、とても勉強になりました。練習問題解答・解説もあるので、専門家を目指す学生さんにも、とても参考になると思います。興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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