『直観でわかる数学』2004/9/8
畑村 洋太郎 (著)
数学(算数)が苦手な人が、なぜそう感じてしまうのかを教えてくれるだけでなく、三角関数や微分・積分をどうとらえると直観的に理解できるかなど、数学に取り組むための基本的考え方を教えてくれる本です。
「この本はこんな人に最適です。数学なんてキライだという人。ラクして数学がわかりたい人。問題は解けるのになんだかモヤモヤする人」という宣伝文句に惹かれて、期待しつつ本を開いたら、最初の「長めのまえがき」で、著者の東大理系の教授だった畑村さんが、19歳で大学に入学した直後に、数学の講義を聴いてもチンプンカンプンでさっぱり分からず、「これはもしや自分の頭の出来が悪いからかも」と思ったというエピソードが綴られていて、畑村さんでも、そんなことを考えたことがあったの! と驚かされたと同時に、「数学が得意な人は私とは根本的に頭の構造に違っているのだろう」というコンプレックスが少しだけ和らぎました。これを読めただけでも価値があったかも(笑)。
正直に言って子どもの頃、数学(算数)がすごく苦手で、高校3年になって大学受験のために猛復習したことで、かなり克服は出来たのですが、とにかく時間がなかったので「苦手部分」は「これが出たら捨てる」と切り捨ててしまう乱暴なやり方で克服してきたので、いまだに、その時に切り捨ててしまった「図形などの幾何学」は苦手です(汗)。幾何学が苦手なので、その延長線上(?)にあるような三角関数もかなり苦手、なのにこの本は、いきなり三角関数から始まるのです(涙)。
うーん……と思いつつも読んでいたら、「三角関数」の章扉に「サインはまだしも、コサインは角度が増えると値が減るというのがなんとも気色悪かった。(中略)タンジェントにいたっては90°近くになると無限大になってしまう。その気色悪さは40年経った今でも変わらない。」と書いてあって、「そう! 本当にそう!」と共感を覚えました(ちなみに私にとって、サイン、コサインはかろうじて「拾った側」、タンジェントはまさにこの理由で「捨てた側(タンジェントはすぐに出来る問題だけを拾う)」にありました……数学苦手人間の奇妙な判断基準ではありますが。)
この章では、三角関数は、「見えない直角三角形を見て、角の大きさと辺の長さに着目する」ことが重要だということが、分かりやすい文章とイラストで説明されます。ああ、こんな風に教えてもらえれば、良かったのになーと思ってしまいましたが……よく考えると、高校2年までは、「数学は苦手」と数学そのものを切り捨てていたので、そもそも授業をロクに聞いちゃいなかったのでした……だから本当はちゃんと教えてもらっていたのかも(汗)。
そんな自分語りはどうでもいいことですね。えーと、そして「微分方程式」。高校3年で微分を「拾った」時に、微分は「あるかなり厳しい条件の時の問題」しか問題集に出ていないことに気づき、万が一、大学受験の問題で、これ以外の条件の問題が出題されてしまったら、どうしよう……とかなり真剣に悩みました。なにしろ数学では、「捨てた部分」がかなりあったので、微積分などの「拾った部分」は、なんとしても得点源にしなければならなかったからです(汗)。祈るしかありませんでした……でも実は、「微分方程式」は実用のために出来た方程式で、一部(解ける部分)だけが使えればそれでよく、「これ以外の条件の問題が出題される」なんていう可能性はなかったのでした。それに気づいたのは大人になってからでしたが、この本では、そのこと(「微分方程式のほとんどは解けない」)についても、ちゃんと書いてあります。微分方程式を解くには最終的に積分をしなければならないのですが、「積分はできないものは決して出来ない」のだそうです。なあんだ、やっぱり、そうだったんだ。
この本は、このように「数学の基本」を分かりやすい言葉で教えてくれます。だから私と同じように数学について「もやもや」していることがある方には、すごく参考になると思います。
その一方で、直接、解法に繋がるような「数学の問題を解くためのコツ」というものは、あまり書いてありません。だから受験生にとって「即効性のある参考書」にはならないと思います。が、少なくとも数学コンプレックスを和らげてくれますし、数学的な思考力をつける基礎力をつけるのにもとても役に立ちますので、受験生の方にも、ぜひ読んで欲しいと思います。
個人的には、巻末に付録として収録されていた「直感の極意は丸暗記と暗算にあり」、「数量を生み出す努力をせよ」、「なぜ数学はわからないか?」という三つの記事がすごく参考になりました。というか、本文の最初の章、「三角関数」の文字を見ただけで、「さようなら」してしまう読者が出そうだと予想されるので、このうち前の二つの記事を、本文の先頭にもっていった方が良かったのでは? とすら思ってしまいました。数学苦手人間にとって、三角関数というのは、間違いなく数学ダンジョンのラスボスの一人なのですから……。
数学に苦手意識はあるけれど、数学のことをもっとよく分かりたい……と考えている方は読んでみてください(「三角関数」で挫けず、ぜひ最後まで)。お勧めです☆
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