『薬のギモン早わかり帖』2020/9/25
藤井義晴 (著)
薬と体の仕組みや、私たちがふだん飲んでいる薬の成分を、分かりやすく解説してくれる本です。
……と言って、この本を紹介しようとしているくせに、実は、薬はあまり好きではなく、できるだけ飲まないように心がけています。というのも「薬」と「毒」は同じものだと考えているからです。だから、この本の最初のページに次の記述があるのを見て、内容を信頼できそうに感じました。
「そもそも、薬と毒の成分は極端にいえば同じもの。人間やいろいろな生物になんらかの影響を及ぼす成分を「生物(生理)活性物質」といいます。人間にとって都合のよい物質を薬と呼び、都合の悪い物質を毒と呼んでいるわけです。」
ほんの少し体の調子が悪い時でも、とりあえず薬を飲んでおこうとする人がいますが、私は「薬は飲まないにこしたことはない」派なので、ほんの少し体の調子が悪い時は、ゆっくり休む(睡眠をとる)ことにしています。薬の出番が来るのはその後で、休んでも治らないときに飲むようにしています。
でも薬は、とても大切なものだとも思っています。病気になった時に、薬を飲んで治ったことも、何度もありますから。だから、このような本を読んで、薬に関する正しい付き合い方(知識)を身につけておくのは、大事なことだと思います。
この本は、「飲み薬と注射はどこが違うの?」、「痛み止め薬が、痛い部分に効くのはなぜ?」、「漢方と医薬は何が違うの?」、「ウイルスはどう変化していく?」、「ワクチンて何?」など、一般人が抱きがちな「薬のギモン」について、分かりやすく説明してくれます。
ちなみに「痛み止め薬が、痛い部分に効くのはなぜ?」に関しては、「痛み」を起こしている炎症そのものを治療しているのではなく、「痛み情報が脳に伝わるのを止める」とか、「痛みを引き起こす物質の生成を抑える」とかすることで、痛みを感じなくしているだけのようです。まさに文字通りの「痛み止め薬」ですね。お医者さんが「痛くてどうしようもないときには、これを飲んでください」と言っているのは、「我慢できるなら我慢していいよ」という意味でもあると思っているので、薬嫌いの私は、あまり飲まない薬です。
とても参考になったのは、「薬を牛乳やジュースで飲んではいけない」理由が書いてあったこと。
「薬の中には、牛乳に含まれるカルシウムに反応する成分を含むものがある」とか、「生のグレープフルーツには、CYP(薬の代謝にかかわる酵素)の働きを弱める成分が含まれている」とかいう理由があるので、薬を牛乳やジュースで飲んではいけないそうです。
また、薬に植物由来のものが多いのは、植物の生存戦略を活用しているからのようです。
「植物は敵が来ても動いて逃げることができないので、特異的な代謝物質(アレロケミカル)を作り、化学防御戦略として生き残っていたと考えられ、未知の成分がまだたくさんあります。」
……なるほど。今後も、植物から薬理効果のある化合物が、発見されるかもしれませんね。
この他にも、感染症と薬とか、一般によくある薬(高血圧・糖尿病・コレステロールを下げる・胃・腸・皮膚・向精神薬と睡眠薬……)に関する説明などもあって、とても参考になりました。
ところで、私たちは想像以上に大昔から薬を使っていたようです。例えば、「約5300万年前の人(アイスマン)の胃のなかからフナガタミズゴケが見つかっていて、これを消毒や抗生物質として使っていた可能性がある」とか、「日本でも、1万年前の縄文時代の遺跡から、キハダの樹皮が薬用に保存されていたと思われる状態で発掘されている」とかの情報も知ることができました。
一般人が知っておくべき「薬の知識」などを、分かりやすく説明してくれる本でした。薬は適切に使うと、体を健康に保つのにとても役に立つものだと思います。薬を正しく活用するために、とても参考になる本ですので、ぜひ読んでみてください。
「薬は決められた量より多く飲んだりしても、効き目が早いということはありません。必ず表示されている適量を守って、薬を信頼して上手に利用し、また過信しないことが重要です。」だそうです。薬は使用法を守って、自分の体質や体調を考えながら賢く使いたいですね☆
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