『1冊ですべてわかる ネットワーク運用・保守の基本』2020/7/22
岡野 新 (著)

 ネットワークの運用・保守の仕事の基本を教えてくれる本です。現場での運用ノウハウ、運用を改善・高度化するヒントも多数掲載されています。
「かつてのネットワーク運用・保守の仕事といえば、ハードウェア障害による装置交換作業が主でした。しかし今では、トラフィックの増大に応じた回線増速計画立案や、ソフトウェア障害による解析調査など、多岐にわたるようになっています。」
「はじめに」にこう書いてあるように、ネットの運用保守というと、障害部品の交換など、どちらかというとハードウェア障害への対応が主なのかと思っていましたが、今はソフトウェア障害まで対応するようになっているんですね。最近はハードウェアの性能が向上しているので、障害部品の交換作業は減っているのではないかと思いますが、ネットワーク構成の方はどんどん拡大・複雑化を続けているので、ネットワークの運用・保守の仕事の難易度も重要性も、ますます高まっているのではないでしょうか。
 この本は、『ネットワークの運用・保守の仕事の基本』を書いているので、コンピュータについてはある程度知っているけど、ネットワークの運用についても概要を知っておきたいという方向けの本です。専門用語がそれなりに出てくるので、まったくの素人向けではありませんが、運用・保守につかうコマンドなどの技術的内容にまではあまり踏み込んでいないので、専門家向けというよりは一般向けの内容だと思います。
 個人的に最も参考になったのは、「5-6 障害切り分け作業の準備」で、それを行う際には、次のことに気をつけるそうです。
1)事態を俯瞰的に捉えること
2)お客様から事実情報を手短に引き出すこと
3)得られた膨大な情報の中から事実だけを選別し、優先度をつけて対処すること
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 そして「装置の目視点検」で確認すべきことには、次のようなものがあるとか。
1)機器の電源は入っているか
2)物理的なLAN配線に問題はないか
3)コンソール端末用の空き電源コンセントが作業現場にあるか
4)スイッチに空きポートがあるか
5)作業を行ううえで必要なツールは揃っているか
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 この他にも「お客様へのヒアリング」項目や、「現場に行く前に(必要なもの)」など、実際に作業をする上で参考になることが具体的に書いてありました。
 そして、この本の中でもっとも実践的に参考になると感じたのは、ところどころにある「実務のポイント」。ここでは、「よくある障害の例」が次のように列挙されていました。以下にその項目のみを紹介します。
1)通信事業者側の障害だった
2)ビル停電
3)通信ケーブルが抜けていた
4)電源ケーブルが抜けていた
5)落雷による電源故障
6)電源故障
7)温度異常
8)IPアドレス重複
9)UPS故障
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 ネットワークの運用・保守の基本と、その具体的な作業内容を分かりやすく解説してくれる本でした。ネットワーク・トラブルが起こる前に、重要なシステムは、二重化(冗長化)させておく、バックアップをとるなどの対策を行っておくことが重要だということがよく分かります。
 コンピュータ関連の仕事をしている方にとって、今後ネットワークはますます重要性を増していくでしょう。その運用・保守に関して最新の概要知識を知っておくことは、自分の仕事に必ず役立っていくと思います。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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