『世界を変えた100の化石 (大英自然史博物館シリーズ 1)』2018/7/5
ポール・D・テイラー (著), アーロン・オデア (著), 真鍋真 (監修), 的場知之 (翻訳)

世界屈指の博物館・大英自然史博物館の膨大なコレクションの中から、生命史の節目を語る化石を厳選し、先カンブリア時代から現代まで、46億年の歴史を語る化石100を、写真で紹介してくれる本です。
「生命の歴史は化石に刻まれている」。あちこちの博物館で化石を見るたびに、この生物が生きていた時の環境はどうだったんだろうとか、どうしてこんな形に残ったんだろうとか、いろんな妄想をふくらませて、生命進化の歴史へのロマンをかきたてられます。
この本では、先カンブリア時代(46億年前~5億4000万年前)から、新生代(6600万年前~現代)の見事な化石を、写真でじっくり眺めることが出来ます。主な内容は次の通りです。
第1章 先カンブリア時代(最古の化石は生物か? 大酸化事変が生んだ生命体 他)
第2章 古生代(カンブリア爆発で生まれた「奇妙なエビ」、陸に上がり生き延びたムシ 他)
第3章 中生代(小さいことはいいこと? 爬虫類から哺乳類への道 他)
第4章 新生代(化石の由来を示す「癒しの石」、空に進出した哺乳類 他)
これらの各章に入る前には、その時代の地球の想像イラスト(6億年前の1つの大陸だけの地球など)もあります。

さて、最初の化石の写真は、エイペックス・チャート。「最古の化石は生物か?」というタイトルがつけられていて、これはシアノバクテリアに酷似しているから化石だという研究者と、無生物由来だとする研究者がいて、いまだ結論が出ていないそうです。
そして次の写真は、ストロマトライト。生命の古い歴史の本を読むと、この名前はしょっちゅう出てきますが、実はどんな形の化石なのか、よく知りませんでした(汗)。赤い凸凹した植物の根のような形の化石みたいに見えます。ストロマトライトは特定の一個体の化石ではなく、光合成をおこなう細菌、シアノバクテリアなどの微生物が堆積物を取り込み、つなぎ合わせて形成したもので、幾重にも層をなすのが特徴なのだとか。このストロマトライト、地球最古(35億年以上昔)の生命体であると同時に、今なお生きた姿を観察できるのだそうです!(塩分濃度の高いラグーンなどで)……驚きです。

さらに、三葉虫には、「最大1万5000個もの多角形レンズからなる複眼があった」そうで、大きくでっぱった目がある三葉虫の写真を見て、今まで博物館で見てきた三葉虫とは、かなり違う印象を持ちました。今後、三葉虫を見る機会があったら、目の部分をじっくり見直そうと思います。(三葉虫のレンズ眼は、耐久性に優れるうえ非常に化石化しやすい鉱物、カルサイトでできていたので、とても観察しやすいのだそうです)。
そして「爬虫類から哺乳類への道」というタイトルのついた中生代のキノドン類の化石。哺乳類の起源をさかのぼると、三畳紀に生きていた「単弓類」と呼ばれるグループにたどり着くそうで、哺乳類は、過去3億年に渡って、爬虫類とはまったく別の進化をしてきたそうです。キノドン類はその単弓類の一種で、爬虫類的な特徴と、哺乳類的な特徴を併せ持っているのだとか。化石からは、いろんなことが分かるのですね。(ちなみに、これらの写真には、化石のサイズが書いてなかったので、サイズが分かるともっと良かったのに……と残念に思っていたのですが、本の最後に「標本詳細」として、化石のサイズなどのデータが記載されていました。また一部の標本には復元図も添えられています。でも、これらは最後にまとめて別掲載するのではなく、本文の写真の近くに添えてあった方が、もっと読みやすかったようにも感じました)。
その他にも、350万年前の灰の中から見つかった人類の足跡(ラエトリの足跡)の化石とか、サメのコプロライト(螺旋型の糞の化石)とか、生痕化石の写真もあって、とても興味深く、生命進化を知る上で重要とされる色々な化石をじっくり見ることが出来ました。
化石好きの人にとっては、お宝になるような素晴らしい図鑑だと思います。ぜひ眺めてみてください☆