『まんがでわかる 地頭力を鍛える』2017/6/30
細谷 功 (著), 星井 博文 (著), 汐田 まくら (著)
どんな問題でも解決することができる「地頭力」の鍛え方を教えてくれるロングセラー『地頭力を鍛える』をコミック化した本です。
勤勉で努力家、やる気はあるのに結果が出せないでいて、リストラ予備軍が集まるという噂の「苦情受付課」に異動させられてしまった可愛いOLの川口さん。落ち込んでイライラしている彼女が、かっこいい同僚の広澤くんのアドバイスを受けて、「地頭力」を鍛えることで変わっていく姿が描かれています。
クレームを受けたことがきっかけで、川口さんは「日本で古い家具で怪我をする人って1年に何人くらいいるのか?」を考えることになるのですが、「とにかくまず資料を集めよう。それをヒントに正確な数字を導き出そう。完璧なものを提出するんだ!」と頑張って1週間後に答えを書面にして持ってきた彼女に、社長は「メールでいいだろ。もう営業の広澤が出題して10分で答えを出してきたよ」と言い放ちます。広澤くんは、社長は完璧な数字ではなく概算の推定値を素早く出すことを望んでいるのだと考えて、「フェルミ推定」で、ざっくりした数値を出していたのです。
広澤くんのような「地頭力」のいい人は65点主義、「限られた時間と情報で最善の答えを出す」ことを優先して、完璧な答えを求めすぎないのだとか……どちらかというと川口さんタイプで「正しい値を調べよう」と優等生的対応をしがちな私にとって、この「答え」は衝撃的でした。ビジネスの現場で求められがちな「ざっくりした数字」というのが、もともと好きではなく、「いい加減な推定値」で何が分かるのか? と疑いをもっていた上に、時間が経過するうちに、その数値がいつの間にか「正しい数字」へとすり替わっていかないかとまで心配していたのです。
でも……最近はいろんなことの変化スピードがとても速いので、時間をかけて過去のデータを分析して「より精度の高い推測値」を出したとしても、すでに他の条件が変わっていて「あてにならない推測値」に過ぎなくなる可能性も高く、そもそも「完璧な推測」などもともと出来るはずがないのかもしれません。だとしたら、「ざっくりした数字」で十分なのかも……と反省させられました(汗)。
しかも原案は65点ではなく、わずか20点でもいいようです。
「仕事は、なにも決まっていない状態から始まって、大きな方針を決定し、だんだんと具体化して形になっていくという流れをたどります。最初のうちは「20点型」で、最後に近づくにつれて「80点型」の仕事のやり方が求められるようになると言えます。」
「20点型の仕事は、まずは短時間でおおまかな答えを出したうえで、短いサイクルで何度もやりとりをしながら精度を上げていくというやり方です。初期のうちに方向性をすり合わせないと後戻り作業が発生する可能性が高いので、このようなやり方が功を奏するのです。」
なるほど、確かにそうですね。
このようにして「地頭力」を鍛えると、次の理由から圧倒的に仕事の生産量を上げることができるそうです。
1)「結論から考える」ことが出来れば、散漫な会議にならずに、最終目的に効率よくたどり着ける。
2)「全体から考える」ことが出来れば、細かい部分的なところにとらわれずに、後戻りや思い込み、誤解を少なくすることができる。
3)「単純に考える」ことが出来れば、少ない知識を様々な範囲に応用して、新しいアイデアの創造や効率化を飛躍的に図ることができる。
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この本は、ストーリーのある漫画(可愛いOLの成長物語)を楽しく読んでいるうちに、「地頭力を鍛える」ことの大切さと、「地頭力の鍛え方」の基本が理解できるようになっています(漫画の他に、文章での簡潔な解説があります)。
ただし「地頭力の鍛え方」のツールである「フェルミ推定」については、広澤くんが「日本で古い家具で怪我をする人って1年に何人くらいいるのか?」の答えを出したプロセスの紹介ぐらいしかないので、「フェルミ推定」に興味がある方は、他の本も読んだ方がいいと思います。
それでも、「居眠りをさせないプレゼンの仕方」など、仕事力を向上させる方法を他にもいろいろ具体的に教えてもらえたので、とても有益だったと感じました。
漫画なのでとても読みやすく、文章も短くて簡潔なので分かりやすいと思います。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆