『老化と寿命の謎 (講談社現代新書 2750)』2024/7/18
飯島 裕一 (著)

「長い老い」を豊かに過ごすために知っておきたい最新知識を教えてくれる本で、2023~2024年にかけて信濃毎日新聞科学面で連載した「老化と寿命の謎を探る」をまとめて、一部加筆したものだそうです。
 ヒトの最長寿は122歳で、哺乳類はホッキョククジラの211歳なのだとか。でも「寿命は最初はなかった」ようです。単細胞原核生物である大腸菌のようなバクテリアは、餌と収容空間がある限り増殖し続け、これ以上は増殖不能というかたちでの死には至らない……生物の体の構造が複雑化するうちに「寿命」が必要になったのでしょうか?
 この本では、「若返りをするクラゲ、再生するプラナリア」のような不思議な生きものや、長寿で知られるニシオンデンザメの不思議な生態についても知ることが出来ました。
「(前略)長寿で知られるニシオンデンザメの体温は0度ほどで、代謝量はきわめて低い。さらに体長は最大6メートルで、およそ4メートルで性成熟するという巨体。性成熟までに約150年もかかり、寿命も400年に及ぶことも、代謝量の見地から納得できる。」
 ……ニシオンデンザメは長寿というよりも、時間の経過スピードが私たちと違う生き物のようにも思えますね……。
老化には次の12の特徴があるそうです(本書ではもっと詳しく解説されています)。
1)ゲノムの不安定化
2)テロメアの短縮
3)エピジェネティクス変化
4)タンパク質恒常性の喪失
5)オートファジー機能低下
6)栄養感知の制御不全
7)ミトコンドリア機能不全
8)細胞老化
9)幹細胞の疲弊
10)細胞間情報伝達の変調
11)慢性炎症
12)腸内細菌叢の破綻
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 そして気になる「細胞老化を防ぐ生活」については、肥満に注意する、喫煙をしない、飲酒はほどほどに、紫外線を過度に浴びない、過度の精神的ストレスを避ける、適度な運動が大切だが過度な運動はよくない、十分な睡眠を取る、コミュニケーションも大切……などのアドバイスがありました。
 さて老化に関しては、最近「フレイル」という言葉をよく聞きますが、フレイルとは、歳を重ねることによって身体機能や認知・精神機能などが低下する現象だそうです。
 そしてその予防のポイントは、栄養、運動、社会参加が三つの柱なのだとか。
 栄養面では、筋肉低下を防ぐためタンパク質をしっかり摂る、胃の健康のためのビタミンD摂取、さらに肉、魚介類、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、海藻類、芋、果物、油の10種類を使った料理を毎日食べることが理想のようです。
 また運動では、有酸素運動に加えて、筋力をアップさせる筋トレの導入が必要なのだとか。
 老化に伴って起こりやすくなる腰痛、肩こり、関節の痛みなどの運動器疾患になったときは、なんと「痛み・しびれを怖がらす、体を動かして治すのが基本」だそうです。なぜなら運動は組織の血行を良くするし、筋肉・骨・関節の劣化を防ぐだけでなく、筋肉を動かすと、さまざまな機能を持つマイオカインと呼ばれる生理活性物質が体中に分泌されるから……やっぱり、毎日こまめに運動しないといけませんね!
 この他にも「認知症リスク低減」のためのガイドラインとして、身体活動、禁煙、栄養、認知トレーニング、社会活動、体重管理、高血圧管理、糖尿病管理、脂質異常症管理、うつ病への対応、難聴の管理なども書いてありました。
『老化と寿命の謎』……老化を引き起こす活性酸素や、「細胞分裂の回数券」のテロメア、代謝と有害物除去を担う「オートファジー」、筋肉が衰えるサルコペニアなど、老化に関する最新の知識の解説も、たくさん読むことができました。
 最も気になる「老化予防」へのアドバイスは、一般的な健康生活へのアドバイスとあまり変わらないような気がしましたが……一般的な健康にいい習慣は、やっぱり老化予防にもなるんですね☆ 老化や寿命について知りたい方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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