『秘境、辺境、異文化 世界の絶景植物』2024/5/10
湯浅 浩司 (著)

 植物文化史の湯浅さんが、世界65か国以上を訪問するなかで出合った個性豊かで魅力的な植物を、植物が環境と結びつき生み出した絶景《織りなされる絶景》と、普段私たちが目にする機会が少ない珍しい花が生み出す景色《見知らぬ世界の花》 の二つの視点から紹介してくれる本です。
 最初に登場するのは、高地の奇妙な巨草、エチオピアのジャイアントロベリアです。次のように書いてありました。
「エリカの茂る林や畑を通り過ぎ、岩山の斜面を抜けると、突然、草原が広がり、植物の絶景が展開した。背丈をはるかに超す巨草、ジャイアントロベリアが林立、群生していた。(中略)エチオピアのジャイアントロベリアは、茎の直径が15センチにもなり、幹のように太い。花時には、茎先から花茎が倍近く伸びるので、高さは5メートルになる。」
 ページをめくると大きなヤシの木が群生しているような写真で……これが……草? 全然、草には見えません。世界にはいろんな植物が生えているんですねー……。
 巨草に驚かされた後、次の「カナリア諸島(スペイン)のエキウム」には、さらに驚きが!
「(前略)3メートルに達する花茎に、千を超えるほどの花が密生して咲く。周辺の低木より群を抜いて立ち、さながら高山の女王を思わせる。」
 ……と書いてありましたが、写真を見るとまさに赤い小花がびっしりと塔となって咲き誇っている「花塔」が! 青い空を突き上げるように咲いていて……その遠方にティデ山が……驚くほど美しくて不思議な写真でした……。

 そして私も知っている「個性豊かな木」、マダガスカルのバオバブも登場。
「(前略)もうもうと舞う砂塵の中、水田が広がり、先の丘に、遠目でもはっきりとわかる巨木の林立。バオバブだ。」
 大木の割に葉が少ないという個性的なバオバブは、なんと「樹皮の下を覆う葉緑素」による樹皮下光合成でエネルギーを補っているそうです。樹皮は茶色で、緑にはまったく見えませんが……そんな機能を持っている植物もあるんですね……。
 また知っているものとは、まったく違う姿をしているのが「南アフリカのアロエ」。なんとその大株では、高さ10メートルにもなるそうです。
「(前略)アロエは多肉植物として知られるが、ツリーアロエが示すように、祖先は樹木であったとみられる。」
 ……と書いてありました。アロエには、樹木のものもあるんですね……。
 とても美しかったのが、「四川省(中国)のメコノプシス」。最初の写真では、美しい青い花が咲き誇っています。
「赤、黄、青の三原色は、色の基本だが、意外にも3色そろった花は、まずない。(中略)ところがメコノプシスは申し分のない、赤、黄、青の三原色の花を咲かせる。さらに白、ピンク、紫の花もあり、同一属としては植物中最も色が多彩である。」
 ……ということで、ちゃんと赤、黄、青、紫の花が咲いていました。
 この他、サワロ国立公園(アメリカ・アリゾナ州)でも、サボテンの花がとても美しいことに驚かされました。
 またロッキー山脈(アメリカ)では、……
「イエローストーンをはじめロッキー山脈では、マツ、トウヒ、モミの針葉樹を中心とした森が広がる。マツはロッジポールパインと呼ばれる種類だが、日本のマツのイメージとは異なり、遠望ではスギそっくり、直幹で円錐形に育つ。」
 ……本当にスギみたいなマツなのです。ここではエレファントヘッドも面白かったです。
「エレファントヘッドはシオガマのなかまで、上側の花弁の先が象の鼻のように伸び、左右の花弁は耳みたいだとして、小さいながら象の頭に見立てられた。」
 ……まさに象の鼻のような花で、うまいネーミングだなーと笑ってしまいました。
『秘境、辺境、異文化 世界の絶景植物』……世界には、私たちが知らない緑と花の世界が広がっていることを写真と文章で教えてくれる本でした。(フルカラー写真が多いですが、一部は白黒写真もあります)。
 この他にも、「アンコール遺跡(カンボジア)の気根」とか、「チマンタテプイ(ベネズエラ)のチマンタエア(柱サボテンのようなキク科植物)」とか、珍しい植物をたくさん見ることが出来ました。なかなかアクセスできない場所の植物も多く、貴重な写真満載です。植物好きの方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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