『太陽の脅威と人類の未来 (角川新書)』2024/7/10
柴田 一成 (著)

 私たちの想像をはるかに超えたスケールで起こるさまざまな太陽現象、知っているようで知らない宇宙の姿を、太陽研究の第一人者の柴田さんが紹介してくれる本で、2016年に刊行した単行本『とんでもなくおもしろい宇宙』を新書化したものだそうです。
 2024年5月、太陽大フレア(太陽面爆発)の連続発生が約10年ぶりに起き、カナダやアメリカ北部はもとより、日本各地でもオーロラが見えたことは記憶に新しいと思います。このような太陽活動は、人間の活動に次のような影響を与えるそうです。
・人工衛星が制御不能になる
・船や航空機の位置情報に誤差や途絶が生じ、航行システムが阻害される
・電気製品が破損
・停電
・宇宙飛行士や、航空機の乗員乗客は高レベルの放射線にさらされる
・低緯度でもオーロラが見える
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 ……オーロラ綺麗☆と単純に喜んではいられませんね……。
 太陽では、次のような現象が起きているそうです。
「太陽が放つ膨大なエネルギーを生んでいるのは、中心部の「コア」で起こっている「核融合反応」です。(中略)
 太陽のコアで起こっている核融合反応とは、軽い原子同士がくっついて、より重い原子になる反応のことで、太陽では水素の核融合反応が起きています。水素原子四つがくっつくことでヘリウムになります。(中略)
 太陽は質量比で約73.8%が水素、残りのほとんどがヘリウムです。(中略)
 太陽の場合、中心の温度は1580万度にも達し、その上、自らの重さによる加圧で高い密度になっているので、核融合に最適な環境がおのずとでき上がっています。」
 ……そして太陽はたまに大フレアを起こして、地球に、磁気嵐による停電などを引き起こしてしまうのです。
「磁気嵐というのは文字通り強力な磁気の嵐で、地球の磁場を変動させてしまいます。太陽フレアから飛び出した大量のプラズマが地球磁気圏に衝突・侵入すると、地球磁気圏や電離層に大電流が流れます。そのため地球の磁場が激しく変動し、そのことで伝導体に電流が流れてしまうのです。」
 また太陽には「黒点」がありますが、ここは他の場所より2000度も低いそうです。その理由は、黒点が「強い磁場」だから、のようです。磁場には磁力があり、磁力があると、あたりにあるプラズマと相互作用します。電気が通ると、その周辺のプラズマは力を受け、内部からのエネルギーを輸送してくれる対流が妨げられてエネルギーが来なくなり、必然的に温度が下がって色が黒く見えようになる、ということでした。
 この他にも太陽の「プラージュ」とか、「ダーク・フィラメント(フィラメント)」とか、「プロミネンス」とか、さまざまな現象について知ることが出来ました。
 また月や金星、火星、土星などについても、さまざまな解説があります。Google Earthの火星版、Google Marsがあったんですね。
 初耳だったのは、『明月記(平安時代末期から鎌倉時代初期の貴族・藤原定家の日記)』に、1054年の超新星爆発の観察記録があったという話。
 20世紀の初めころ、かに星雲が秒速1000kmという猛スピードで膨張していることに気づいた天文学者が、大きさから逆算して1000年ほど前に爆発したと推定。その頃の古文書を探しましたが、欧米の古文書には記録がなく、中国と日本に1054年の客星の記録があったそうです。日本の古文書、明月記には「1054年に客星出現。明るさ歳星(木星)のごとし」と書かれていたそうで……これが超新星爆発の記録だったんですね! そんな凄いことが1000年ほど前に起こっていたなんて……驚きでした。
『太陽の脅威と人類の未来』……太陽や太陽系のことを詳しく紹介してくれる本で、とても興味津々でした。科学や宇宙が好きな方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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