『都市を学ぶ人のためのキーワード事典 これからを見通すテーマ24』2023/9/21
饗庭 伸 (著, 編集), 園田 聡 (著), 加藤 優一 (著), 鈴木 美央 (著), & 28 そ
都市をめぐる実務・研究に携わるなら押さえておきたい話題を、気鋭の執筆陣が24のテーマ・約230個のキーワードでコンパクトに解説してくれる本で、内容は次の通りです。
◎人口減少
(人口減少、縮小都市、空き家| 空き地、など)
◎都市再生
(都市再生、規制緩和と公共貢献、市街地再開発事業、など)
◎都市のリノベーション
(リノベーション、廃校活用、エリアリノベーション、など)
◎公共施設再編
(公共施設マネジメント(PFM)、公共施設等総合管理計画、施設白書、など)
◎パブリック・ライフ
(パブリック・ライフ、プレイスメイキング、タクティカル・アーバニズム、など)
◎マーケット
(マーケット、定期市、街路市 | ストリートマーケット、など)
◎アートと都市
(アートプロジェクト、アート系ワークショップ、アートマネジメント、など)
◎住まい
(シェア居住、住宅価値の多様化、ネイバーフッドデザイン、など)
◎社会的包摂
(社会的排除、ホームレス、ひきこもり、など)
◎超高齢社会
(再帰的超高齢社会、閉じこもらないまちづくり、サクセスフル・エイジング、など)
◎子どもとともに育つまち
(子どもの権利条約、子どもにやさしいまち(CFC)、公共ばあちゃん、など)
◎町並み・景観まちづくり
(景観 | 景観まちづくり、景観ガイドライン、町並み保存、など)
◎ツーリズムと都市
(観光まちづくり、持続可能な観光、オーバーツーリズム、など)
◎地方創生
(地方創生、地域拠点、地域運営組織、など)
◎国土の計画
(全国総合開発計画、国土形成計画、河川総合開発、など)
◎グリーンインフラ
(グリーンインフラ、流域治水、暑熱緩和、など)
◎緑地と農
(都市農地、市民農園、農住都市、など)
◎レジリエンス
(レジリエンス、災害対応モデル、復興デザイン思想、など)
◎交通まちづくり
(交通まちづくり、ニューアーバニズム| TOD、地域公共交通計画、など)
◎エネルギー
(地域脱炭素ロードマップ、脱炭素先行地域| 脱炭素ドミノ、ゼロカーボンシティ宣言、など)
◎データとシミュレーション
(シミュレーション、AI 画像識別、Web GIS、など)
◎ワークショップ
(ワークショップ、シリアスゲーム、予算編成ゲーム、など)
◎ガバナンス
(自助| 共助| 公助、社会関係資本、自分ごと化、など)
◎来るべき都市
(プラネタリー・アーバニゼーション、サステイナブルシティ、スマートシティ、など)
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24のテーマ・約230個のキーワードを解説してくれる「事典」なので、読んでいて面白いわけではありませんでしたが(苦笑)、これからの都市や社会を考えるための基礎知識や参考になる情報が、総合的に網羅されていたと思います。
へー、という意外な情報もありました。その一つが「持続可能性評価ツール」の次のようなオランダ・アムステルダムの事例。
「サーキュラー・エコノミーの先進地であるオランダのアムステルダムでは、Madasterという素材と製品のオンライン登録システムが開発されている。本システムは、デジタルプラットフォーム上で、建築物の建設に使用された材料や製品を含めて登録・保管することで、再利用が容易にして廃棄物をなくすことを目指すものである。建物を材料の貯蔵庫と捉える考え方である。」
……最近の建築は建造がデジタル管理されているので、素材と製品のオンライン登録にそれほど手間はかからないのかもしれませんが、この登録システムが、再利用や廃棄物をなくす場面で、実際にどんな効果を発揮してきたのかが気になります(笑)。まあ、少なくとも不法不正建築の抑止には役立ちそうですね……。
またとても良いなと思ったのは、「◎都市のリノベーション」の「廃校活用」や「エリアリノベーション」。なんと75%もの廃校が活用されているそうです!
「廃校活用とは、廃校となった学校施設を新たな使用目的で活用することを指す。(中略)
2018年時点で、現存する廃校施設の75%が活用されており、用途はアートギャラリーや創業支援施設、工場や宿泊施設など様々だ。」
……廃校は広い校庭がそのまま駐車場になりますし、住民の交流施設や防災施設を兼ねた道の駅などに、わりと容易に転用できそうですね!
そして「エリアリノベーション」では……
「エリアリノベーションとは、建物単位のリノベーションが同じエリアで同時多発的に起こり、面として展開する動きをいう。」
「また、エリアリノベーションの手法を応用して、これまで1つの建物が担ってきた機能をエリア全体で担う事例も生まれている。例えば、一般社団法人日本まちやど協会で、全国各地でエリア全体を「ホテル」と見立てる取り組みを広げている。空き家を再生した宿に泊まり、近くの飲食店で食事してもらうなど、地域の暮らしを追体験できる仕組みになっている。また、東京都高円寺で活動する株式会社銭湯ぐらしは、エリア全体を「家」と見立てる取り組みを展開している。銭湯をまちの浴室、連携する拠点をまちの台所や書斎と見立てることで、暮らしを地域に開くライフスタイルを提案している。」
……とても面白い試みで、ちょっと体験してみたくなりました。
この他にも、次のような気になる情報が……
・「(前略)現在では小学生のうち放課後に外遊びをしない子の割合が、都市では8割、農村でも6割にのぼる結果となった。」
・「都市の自然は、私たちの暮らしに様々な恵みをもたらしている。「グリーンインフラストラクチャー」は、国・地域ごとに様々な定義はあるが、共通する考え方は、様々な自然の恵みを賢く活用することで、社会課題を改善しようとする点である。」
・「国土強靭化とは、年をレジリエント化する国際的な潮流を受けて、日本で取り組まれている防災減災政策の名称である。この政策は、生命と財産を最大限守りつつ、地域社会の致命的外傷を回避し、災害から迅速に回復する、「強さ」と「しなやかさ」を備えた国土の構築に資する国土強靭化基本法(2013年12月制定)を根拠としている。」
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『都市を学ぶ人のためのキーワード事典 これからを見通すテーマ24』……都市に関する基本用語から、新しい思想・制度やトレンドまで解説してくれる本でした(ただ……ちょっと文字が小さいので、購入するときには書店などで実物を確認することをお勧めします)。都市に関わる仕事をしている方にとっては、参考書として、とても役に立つと思います。ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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