『AGELESS(エイジレス):「老いない」科学の最前線』2022/11/30
アンドリュー・スティール (著), 依田卓巳 (翻訳), 草次真希子 (翻訳), 田中的 (翻訳)
がん・心臓病・脳卒中の根本原因は「老化」ですが、いま、その「老化」自体が「治療」対象になりつつあります。全世界が注目する「生物老年学」を詳しく教えてくれる本です。
「はじめに」には、年齢に関係なく死亡率がほぼ一定という「無視できる老化」の特徴を持つ動物(ガラパゴスゾウガメ、カメ、サンショウウオ)がいることが紹介されていました。
それに対してヒトは、加齢にともなって死亡リスクがどんどん上がっていきます。その根本原因は、老化に関連した病気にかかる可能性が、同時多発的に急上昇するからだそうです。
それでも衛生環境の改善や医療の進化にともなって、世界の平均寿命は2019年には72.6歳に達しているのだとか。どんどん伸びているヒトの寿命をさらに伸ばすことが出来るかもしれない……本書では、「老化」を治療・予防するための研究の最前線と、老化を予防するために今できることを詳しく紹介してくれるのです。
「第4章 なぜ私たちは老化するのか」には、老化の原因として次の10項目があげられていました(本書には詳しい説明があります)。
1)二重らせんのトラブル――DNAその損傷と突然変異
2)短くなるテロメア
3)タンパク質の問題――オートファジー、アミロイド、付加体
4)エピジェネティクス
5)老化細胞の蓄積
6)勢力争い――機能不全のミトコンドリア
7)シグナル伝達の失敗
8)腸の直感的反応――マイクロバイオームの変化
9)細胞の消耗
10)防衛不全――免疫システムの故障
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そして「第5章 古きを捨てる」では……
「(前略)歳をとると徐々に増えていく老化細胞、細胞内をうろつき、その機能をゆっくりと低下させる欠陥タンパク質やガラクタ物質、そして細胞内にたまって心不全から認知症までを引き起こす、折りたたみ不全のタンパク質「アミロイド」。これらを発生源で取り除くことが、もっとも明快な解決法だ。」
……ということで、老化細胞除去薬、食事制限模倣薬、アミロイド除去薬など、さまざまな研究が紹介されています。
続く「第6章 新しきを得る」では、「造血幹細胞(HSC)移植」や「成長ホルモン」に関する研究が、さらに「第7章 修復にいそしむ」では、老いた血液と若い血液の交換や、シグナル伝達調整薬などの研究が紹介されていました。
また「第8章 老化をリプログラミングする」には、寿命は遺伝しないらしいことや、100歳以上の人に多い遺伝子などの研究が紹介された他、次のようにも書いてありました。
「真の意味で老化を治療するには、もっと全体的な「システム生物学」の手法をとる必要がある。細胞や体は、一度にひとつずつ修正できるような単独の現象の集まりではなく、構成要素が互いに、さらには自身とからみ合ったネットワークを形成して、相互作用している複雑なシステムであることを理解しなければならない。」
……確かに、そうだと思います。
そして私たちに最も参考になる情報として「第10章 いますぐすべき、寿命を延ばす方法」では、次の11の方法が紹介されていました。(もちろん本書内には、もっとずっと詳しい説明があります)
1)煙草を吸わない
2)食べすぎない(バランスのとれた食事をする)
3)少し体を動かす
4)夜は7~8時間の睡眠をとる
5)予防接種を受け、手を洗う
6)歯を大切にする
7)日焼け止めを塗る
8)心拍数と血圧を観察する
9)サプリメントにわずらわされない
10)長寿薬にわずらわされない――いまのところは
11)女性になる
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一部、生まれた時に決まってしまっている健康法もありますが(笑)、全体としては、私自身もすでに実行済みの、ごく一般的な「健康によい生活法」のように思います。
なお、このうちの10番目は、本書で紹介された数多くの「長寿命に効果がありそうな」研究や薬は、まだ一般の人が使えるレベルに至っていないということ。
また11番目は、本書内でも「いちばん参考にならないアドバイス」と言っていますが(笑)、女性の方が、平均寿命が5歳長いのは、女性はXX、男性はXYの染色体を持っている(男性は1本しかないX染色体の遺伝子のひとつに問題があった場合、バックアップ・コピーがない)ことが原因の一つ(色覚異常が男性に多いのは、この理由による)という話に、ああ、そうだったのか……と、なんとなく納得してしまいました。
私自身が一番力を入れているのは3番目で、「少し体を動かす」だけでなく「少し強めの運動を習慣化」しています。本書にも、次のように書いてありました。
「運動をすると、体の代謝や血行、骨や脳と筋肉をつなぐ神経にまでたくさんの変化が起きる。運動はテロメアの長さを伸ばし、筋肉の老化細胞の数を減らし、「衛星細胞」(筋肉を再生する幹細胞)の数を増やし、体じゅうのその他の幹細胞を活性化する。運動をする筋肉は座りっぱなしの筋肉よりも状態のいいミトコンドリアを多く含んでいる。(中略)
また、運動には、炎症を減らす効果もある。」
……運動すると食事も進みますし、夜もよく眠れるので、お勧めです☆
まさにタイトル通り、『AGELESS(エイジレス):「老いない」科学の最前線』の本で、とても参考になりました。誰でも楽に長寿になれそうな「薬」の研究は進んでいるようですが、とりあえず今の私たちに出来ることは、「食事・睡眠・運動」の「健康増進生活」をすることがベストのようです。それなら副作用も心配ありませんし。これを続けることで健康に長生きしているうちに、いつか夢の健康長寿薬が完成してくれるかもしれません(笑)。健康長寿を目指したい方は、ぜひ読んでみてください☆
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