『運動・からだ図解 生化学の基本』2023/6/26
一條秀憲 (監修)

 生化学を直感的に理解できるよう、イラストを活用して分かりやすく解説してくれる入門書です。
 生化学とは、次のような学問だそうです。
「生化学(biochemistry)は、人の体を核酸(nucleic acid)、たんぱく質(protein)、脂質(lipid)、糖質(carbohydrate)などに代表される分子の集合体として捉え、それらの物質がどのようにして細胞や臓器や個々の正常な機能を維持しているかを解き明かしてきた学問であり、今も次々と新しい発見が成されている、現在進行形の最先端研究分野です。」
 人体の60%が水、16%がたんぱく質、15%が脂質、5~6%がミネラル、1%未満が糖質で、人体を構成する元素は、65%が酸素、18%が炭素、10%が水素、3%が窒素、その他(カルシウム、リン、カリウム、硫黄、ナトリウム、塩素、マグネシウム、など)なのだとか。そして「代謝」とは、体内で行われているあらゆる化学反応のことを言うそうです。

 またビタミンには、1)脂溶性ビタミン(A、D、E、K)、2)水溶性ビタミン(B群、C)の二種類があり、多量ミネラル、微量ミネラルには次のようなものがあることなど、一般人にも役にたつような情報もたくさんありました。
「多量ミネラル(主な働き)」
・カルシウム(骨や歯の成分。神経の伝達、筋肉の収縮、血液凝固、塩酸基平衡、酵素の活性化など)
・カリウム(細胞内に多い。塩酸基平衡、浸透圧の維持、心臓や筋肉の機能の調整など)
・リン(骨や歯、核酸やリン脂質、ATPの成分。塩酸基平衡)
・硫黄(毛や爪のケラチンの成分。糖質や脂質の代謝に関わる)
・ナトリウム(細胞外液に多い。体液の浸透圧やpHの調整、神経や筋肉の活動電位に関わる)
・塩素(細胞外液に多い。体液の浸透圧やpHの調整、胃酸の成分で消化酵素の活性化に関わる)
・マグネシウム(骨や筋肉に多い。多くの酵素の活性化。骨形成、神経の興奮の抑制など)
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「微量ミネラル(主な働き)」
・鉄(赤血球の中のヘモグロビンや筋肉のミオグロビンの成分で、酸素の運搬に関わる)
・亜鉛(多くの酵素の成分。たんぱく質やDNA合成、味覚、免疫などに関わる)
・銅(鉄の代謝や輸送、活性酸素の除去、神経伝達物質の産生などに関わる)
・クロム(インスリンの働きを助ける。脂質代謝にも関わる)
・ヨウ素(甲状腺ホルモンの成分で、たんぱく質の合成やエネルギー代謝に関わる)
・セレン(甲状腺ホルモンの活性化、抗酸化作用)
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 そしてグルコースは、ヒトだけでなくほとんどの生物にとって最も重要なエネルギー源だそうです。次のように書いてありました。
「(前略)グリコーゲンは動物由来、デンプンは植物由来で、グリコーゲンはデンプンよりもつながるグルコースが圧倒的に多いのが特徴です。グリコーゲンは、大事なエネルギー源であるグルコースを体に貯蔵しておくための物質で、骨格筋に400g程度、肝臓に100g程度貯蔵されているほか、全身の細胞のほとんどが少量のグリコーゲンを持っています。」
 また糖質の代謝とは……
「グルコースを代謝するプロセスは解糖系とTCA回路、電子伝達系の3要素で構成されています。解糖系でグルコースを2個のピルビン酸にし、そのピルビン酸をTCA回路で代謝してエネルギーを取り出し、そのエネルギーを電子伝達系でいつでも使えるATP(アデノシン三リン酸)の形にします。解糖系よりTCA回路と電子伝達系の方がより大きなエネルギーを取り出すことができます。」
 そして解糖系のプロセスは……
1)解糖系の前半ではATPを2個消費する
2)解糖系の後半では2個のNADHと4個のATPが産生される
3)前半と後半の合計で2個のNADHと2個のATPができる
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「ヒトは1日に自分の体重と同じくらいのATPを消費しているといわれています。一方で、体内にあるATPの量はたった数十グラム程度。つまりATPがエネルギーを放出したら、生じたADPとリン酸をすぐにATPに再合成するというサイクルをくり返しているのです。」
 ……なるほど。この本は、こんな感じで、体内の化学反応を詳しく教えてくれます(本書内ではもっと詳しく説明されています)。
 そして体内で働く主なたんぱく質には、次のようなものがあります。
1)構造たんぱく質(コラーゲン、エラスチン、ケラチン)
2)輸送たんぱく質(アルブミン、ヘモグロビン、リポたんぱく質)
3)酵素たんぱく質(ペプシン、リパーゼなど)
4)収縮たんぱく質(アクチン・ミオシン)
5)調節たんぱく質(インスリンなどのホルモン、他)
6)防御たんぱく質(免疫グロブリン)
7)貯蔵たんぱく質(フェリチン(鉄の貯蔵))
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 とても興味津々だったのが、キロミクロンやVLDL、LDL、HDLなどの「リポたんぱく質」。その基本構造は、次の通りです。
1)脂質はそのままの状態で血流に乗せて運ぶことができない
2)リポたんぱく質は脂質を入れた水になじむカプセル
3)リポたんぱく質は大きさなどによって4種類に分類される
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「リポたんぱく質は、脂質を血液の流れに乗せて運ぶための「玉」です。脂質は水になじまないので、エネルギー源や細胞膜などの成分になる脂質を全身に運ぶには、何らの形で水になじむようにしなければなりません。そこで水になじむ部分を持つリン脂質とたんぱく質などでカプセルをつくり、中にトリグリセリドやコレステロール、コレステロールエステルといった脂質を入れたリポたんぱく質をつくります。」
 ……なるほど! 「水に溶けない」脂質を血液で運ぶためには、こんな仕組みが必要なんですね!
 また健康診断で「高め」と指摘されがちなコレステロールは……
1)VLDLは肝臓から出て全身に脂肪酸を供給する
2)LDLは全身にコレステロールを供給する
3)HDLは全身からコレステロールを回収する
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「HDLは血流に乗って全身をまわりながら、末梢の組織で余ったコレステロールを回収。回収したコレステロールの一部はLDLに供給され、残りは肝臓に集められます。」
 ……LDLは高いと問題だけど、HDLは高くても問題ないのは、こういう性質があるからなんですね!
『運動・からだ図解 生化学の基本』……内容的には専門家向けなのだと思いますが、イラストが多く、解説も分かりやすいので、一般の人が読んでもとても参考になる本だと思います。体内で起きる化学反応を、ちゃんと働かせてあげられるよう、栄養バランスがとれた食事をとらないとなー、と思わされました(笑)。エネルギー(ATP)を作るためにも、エネルギー(ATP)が必要なんだし……。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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