『地震・台風時に動けるガイド: 大事な人を護る災害対策』2023/3/30
辻直美 (監修)
高齢化社会で介護に関わる人々がどんどん増えている一方で、我が国では頻繁に発生する地震と台風……この身近でリスクの大きい災害に対して、護る立場で何ができるかを教えてくれる『地震・台風時に動けるガイド: 大事な人を護る災害対策』で、内容は次の通りです。
第0章 護りたい人がいるあなたへ
第1章 家族を護る自宅の防災
第2章 利用者を護る施設の防災
巻末付録:いざというときに慌てないために状況確認チェックシートを備えよう
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これまで防災対策の本は、わりとたくさん読んできたのですが……介護対象の人がいる場合の防災対策本をあまり読んだことがなかったので、この本はとても参考になりました。
「第0章 護りたい人がいるあなたへ」では、落ちそうなものがある場所に滑り止めシート1枚を敷くなど、「ともかく動こう!」と提案しています。「介護対象の相手より5段下の目線で、危険なところを一緒にチェックする」のが大事だとか。
また、「あいさつも防災の一つです。その地域に自分たちが属している、生活しているということをアピールする。これが、いざというときに命綱となるのです。(中略)
こればかりは、普段の行いがものをいいます。助けてもらうためのタネをまくつもりで、“ええ感じ”の人になり、交流していきましょう。」とか、
「日常的にやっていないことは、いざというときにもできません。小テストと同じように、毎日繰り返し行い、普段から意識していることが、災害時にも発揮されるのです。
防災グッズも同様です。買ったものの、未使用のままどこかにしまっていませんか?(中略)
そして何より大切なのは、これらを守りたい相手と一緒に、平時に試しておくことです。」など、なるほど確かに……と気づかされるアドバイスも多数もらえました。「あいさつも防災の一つ」なんですね。そして防災グッズは……いつも一度も使ったことのないものを使用期限ぎりぎりまで未使用のままにしていたけど……確かに、使い方に慣れていないと、いざというときに困ってしまいます……(反省)。
さて「第1章 家族を護る自宅の防災」の冒頭では、2018年の大阪府北部地震直後の衝撃的な被災した室内の写真が! リビングもキッチンも寝室も……倒れてきたもの落ちてきたものでいっぱい(涙)。なのに、防災対策をしていた隣の部屋は、この時ほぼ無傷だったとか……やっぱり、日ごろの対策が大事ですね!
また、スマホやパソコンで調べられる「参考になる情報」として、次の3つが紹介されていました。
1)重ねるハザードマップ
2)地震10秒診断(そのエリアの地震の可能性とダメージを予測)
3)東京備蓄ナビ(何がどのくらい必要になるか備蓄の目安量の割り出し)
そして「多用途に使える“PPGS”は常備して損なし!」だそうです。このPPGSは……P:ペットシーツ(レギュラーサイズ)、P:ペットボトル(空のも保存しておく)、G:ゴミ袋(45L)、S:新聞紙なのですが、このうちペットシーツは、ペットはいないから不要だなと思ってしまいましたが、ペットはいなくても、高分子ポリマーが入っていて吸水性にすぐれているので、災害用トイレとして大活躍してくれるそうです。市販の災害用トイレを買うよりも安いし、使い慣れた便器でできるのも利点だとか。水分を含ませれば枕や氷嚢にもなります……これは買っておかないと……。
また介護者がいる家庭の方に、とても参考になりそうなヒントも……
「リビングに介護ベッドがあり、被介護者の方が普段そこで過ごしている場合、一年通して掛布団は用意しておきましょう。地震の際にかぶれば、身を護れます。」
……あー! 本当にそうですね! 寝たきりの方のベッド周りには落ちてきそうなものを置かないのは当然ですが、掛布団があれば、とっさに自分で自分の身を護ることもできるかも。
こんな感じで、「ちょっと気がつかなかった!」アドバイスが満載です。さすが、「阪神淡路大震災は被災者として、地下鉄サリン事件は現場ナースとして救護にあたり、東北大震災ではレスキューナースとして現地に赴いてきた」辻さんならではの優れた視点だと感心させられました。
この他にも、「いざというときの連絡先リストをつくっておく(近所の人や地域住民の代表や自治体の窓口、介護サービス担当者の連絡先などを、紙にメモして持ち歩く)」とか、
「避難所は、事前に3か所以上チェックする(必ず入れてもらえるとは限らないので3カ所以上チェック、被介護者と一緒に、平時に防災リュックも背負って足を運んでおく)」とか、
「いつ、どこへ、どう逃げるか、前もって決めておく(被介護者がいる場合は、警戒レベル3の段階で、明るく安全に歩けるうちに行動を開始する)」とか、
「防災リュックに入れる衣類は、すべてビニール袋へ入れる(避難所では洗濯できないので、衣類は3日分を)」なども、とても参考になりました。
また「おすすめ防災アプリ3選」は次の通りです。
1)Yahoo!防災速報
2)ウェザーニュース
3)特務機関NERV防災
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そして「第2章 利用者を護る施設の防災」では、介護現場で働いている方向けの情報がたくさん書いてありました。
巻末付録として、いざというときに慌てないための「状況確認チェックシート」の用紙もあり、これをコピーして内容を書き込み、「職員の目につくところに置いておこう!」という実践的なアドバイスもあります。
介護者のいる家庭や現場で、とても参考になる防災ガイドブックでした(ここで紹介したのは、内容のごく一部です。本書には「災害トイレの作り方」の写真での丁寧な説明とか、防災備蓄品リストなど、とても実践的に役立つ情報が満載です。)。
病人やお年寄りの介護をしている方も、介護されている方も、ぜひ一度読んでみて、何か「動いてみて」ください。お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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