『オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題』2022/7/30
川島 隆太 (著)

「オンライン脳」とは、「スマホ・タブレット・パソコンなどのデジタル機器を、オンラインで長時間使いすぎることによって、脳にダメージが蓄積され、脳本来のパフォーマンスを発揮できなくなった状態」のこと。オンラインでのコミュニケーションが、今後、私たちの社会に大いなる悪影響を及ぼす可能性があることに警鐘を鳴らしている本で、内容は次の通りです。
第1章 衝撃の事実! 「オンライン」では心が動かない!!
──東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題
第2章 人間の本能に反している「オンライン脳」
──相互信頼が築けない「オンライン脳」でコミュニケーションは成立するのか?
第3章 「オンライン」と「スマホ」で、脳への複合的リスクがいっそう高まる!
──学力低下、脳発達の遅れ、うつ状態、依存はなぜ起こる?
第4章 オンラインへの「対応力」で、格差がますます広がっていく
──できる子、できない子、できる親、できない親がデータで明確になってきた
第5章 「オンライン脳」と、どう付き合えばよいのか?
──個人、家庭、企業が、今すぐ始めるべきこととは?
   *
 新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態を受けて、私たちの社会は「オンライン化」が急速に進み、人と人の対面接触がどんどん減少しています。
「第1章 衝撃の事実! 「オンライン」では心が動かない!!」では、東北大学の緊急実験から分かった危険な大問題について紹介されていました。
 決めたテーマに沿った会話や議論を、1)顔を直接見ながらの「対面会話条件」、2)Zoom(ズーム)を使いモニタを介して顔を見ながらの「ウェブ会話条件」という2つの条件の下で行った実験の結果、対面会話では参加者それぞれの間で「共感」が生じたのに、オンラインのウェブ会話ではそれが生じなかったそうです。
 対面会話では脳の同期が起こったのに、オンラインでは同期が起こらなかっただけでなく、オンラインコミュニケーションの会話では、脳の状態が「黙ってボーッとしているとき」同じだったとか……。
 続く「第2章 人間の本能に反している「オンライン脳」」では、なんと「そもそも、パソコンやモニタでゲームをすると、一般に脳の「前頭前野」の働きに抑制がかかってしまうという不思議なことが起こります。」という驚きの事実が書いてありました。
「実際の実験では、ゲームに慣れないうちは操作で試行錯誤を繰り返したためでしょう、前頭前野が活発に働きました。ところが、ゲームに慣れたとたん、前頭前野が活動しなくなってしまいました。それどころか、なぜか逆に、安静にするときよりも活動量が低下する前頭前野の強い「抑制現象」が生じたのです。(中略)
 しかも、テレビ番組の視聴中にも、番組の種類とは無関係に、ゲームの場合と同じ抑制現象が生じました。」
 ……結構ぼーっと見ていることが多いテレビの視聴の場合は、脳の活動が活発でなくても不思議はありませんが、ゲームをしている時に「前頭前野の働きに抑制がかかる」というのは……本当に不思議ですね。いったい何故なんでしょう?
 そして最も衝撃的だったのは、「第3章 「オンライン」と「スマホ」で、脳への複合的リスクがいっそう高まる!」。
 なんと「スマホは大脳皮質の発達を遅らせ、成績を下げる」という調査結果が出たことが書いてありました。
 実は、平成25年度(2013年)に仙台市の中学生2万2390名を対象とした調査で、「家での学習時間とは関係なく、携帯・スマホを使う時間が長ければ長いほど成績が悪い」ことが分かったので、平成26年度からは7万人を超える小中学生一人ひとりにID番号を振って、追跡調査を始めたそうです。その結果、現時点で明らかになっていることは……
1)スマホ使用による子どもたちの成績の低下は、自宅での「学習時間」の長さとは直接に関連していなかった。
2)成績低下は「睡眠時間」とも直接関連していなかった。
3)スマホが原因で、結果的に学力が低下している(スマホを始めると成績が下がり、手放すと上がる)
 ……だそうです。
 そしてさらに衝撃的な調査結果が!
 仙台市の5~18歳の児童生徒224名を対象に3年間、脳の発達の様子をMRIで観察。各自のインターネットの利用状況の違いで7グループに分けたのですが、最初の観察では大脳灰白質の体積には差がなかったのに、3年後には明らかな差があったそうです。
「インターネット習慣がない、または少ない子どもたちは、3年間で大脳灰白質の体積が増加していました。ほぼ毎日インターネットを使う子どもたちは、増加の平均値がゼロに近く、恐ろしいことに、ほとんど発達が止まっていたのです。」
「(前略)おそらくはスマホを使ってインターネットを使いすぎたことによって、脳の発達そのものに障害が出た、と思われます。
 スマホを高頻度で使えば、3年間で大脳全体の発達がほぼ止まってしまう。
 ならば、勉強しようがしまいが、また睡眠を十分とろうがとるまいが、学力が上がらなかったのは当然、というわけです。」
 ……こ、これが本当だとしたら、大問題ですね!
 またスマホの長時間使用による学力低下の大きな原因の1つと考えられるものに、「スイッチング」があるそうです。「スイッチング」とは「何かに集中しているとき妨害が入り、別のことをやり始めること」が何度も繰り返されて、1つのことに集中する時間が極端に短くなる現象(状態)のことで、「スマホはスイッチングしやすく作られているので、「脳が何にも集中できない状態」が続いてしまう」と書かれていましたが……これ、実は私も毎日やっています! 何かの作業をしていて、ふと集中力がとぎれた時、気分転換にスマホを開いてマンガやネット記事などを読んでいるのです。そしてそれを読んでいるうちに、また集中力がとぎれるので、また作業に戻る……便利なスマホを使って時間を濃密に有効活用しているような気になっていましたが(汗)……これはまさしく「スイッチング」以外のなにものでもなく……私自身の大脳皮質を働かせなくしているのでしょうか? ……なんかすごく気になります。幸い、今のところ重大な問題は何も感じていませんが……私の場合はスマホからの呼び出し(妨害)ではなく、「自らの意思」でスイッチングしていることが多いからでしょうか? うーん……やっぱり、ちょっとヤバいのかも……。
 そして「第4章 オンラインへの「対応力」で、格差がますます広がっていく」では、スマホなどのせいで、家庭での直接コミュニケーションの時間がすごく減っているとして、次のように書いてありました。
「コロナ禍による人と人との交わりの欠如、コミュニケーションの断絶は、デジタルデバイスやネットを使うオンラインコミュニケーションでは、充分に補うことができません。」
 また「第5章 「オンライン脳」と、どう付き合えばよいのか?」では、子どもとスマホについて、次のように書いてありました。
「小児科医はじめ医学界でコンセンサスが得られているのは「2歳までの幼児はデジタル機器に触れさせてはいけない」ということです。」
「未成年に持たせるなら「1日の使用は1時間まで」ルールを徹底する」
 ……そして、子どもだけでなく大人も、スマホの使い過ぎは良くないようです。
「大人でも子どもでも、過度のデジタル使用が生活習慣病につながることは、科学的なデータで示されています。」
 ……その一方で、「すべてをコロナ前と同じように戻すのではなく、コロナでかなりの部分をオンライン化した経験は生かしたほうがよさそうです。」とも言っています。
「(前略)たいして重要ではない会議をどしどしオンライン化し、重要なものを対面とすれば、コロナ禍を逆手に取った事例となるでしょう。」
 ……現状を考えれば、このアドバイスが最も合理的だと思います。
 それにしても……仙台市の児童生徒の調査で分かった「スマホを高頻度で使えば、3年間で大脳全体の発達がほぼ止まってしまう」という結果はとても危険な大問題なので、ぜひ早急に全国的な調査を行っていただきたいと思います。東日本大震災などの特殊な事情によるものかもしれないし、調査に何か問題があったのかもしれないので、他の地方でも同様の調査を行うことで、より正しく判断できるようになるのではないでしょうか。今後も注目していきたいと思います。
『オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題』……かなり衝撃的な問題を教えてくれる本でした。……とは言っても、私たちの生活は、すでに「オンライン」を避けることはできなくなっていることも事実だと思います。今後の「オンライン」との関わり方を考えるために、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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