『本質思考トレーニング』2019/2/1
米澤 創一 (著)

 正しい問題解決や潤滑なコミュニケーションを妨げる「9つのワナ」を知って、その脱出法身につけるだけでなく、ワナにハマらないための力を鍛える方法も教えてくれる本です。
 本質的問題解決を妨げる「9つのワナ」というのは、次のようなもの(本書内では、もっと詳しい解説があります)。
1)思考のショートカット
2)現状黙殺
3)浅い分析
4)安易な手段
5)やりっぱなし
6)怒りの代償
7)脳のクセ
8)他人事シンドローム
9)解決済みなのに気づかない
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 そしてその解決方法に関しては、例えば「思考のショートカット」の場合、次のようなアドバイスがありました(ここではその一部を抜粋で紹介しています)。
・成功体験、常識、通説、権威、世論などに安易に従ってしまったり、考えることなく決めつけてしまったりすること、目の前の現象などに惑わされて、それがなぜ起こったか考えずに、原因を決めつけ、不適切な手段をとってしまうことに注意。
・一度立ち止まってやり直すことが、遠回りのように見えて確実な方法、など。
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 また「浅い分析」の場合には……
・根本的原因(RCA)を徹底的に行う。行う際は、主語、述語、目的語を正しく使い、具体的な表現を心がける
・「なぜ」を何度も繰り返す(最低でも5回程度)、など。
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 このように「9つのワナ」とそこからの脱出法を、セットで解説してもらえます。
 さらに、このようなワナにハマらないための力を鍛えるトレーニング法も、9つ教えてもらえました。
1)想定力を鍛える
2)懐疑的スタンス
3)なりきる
4)情報発信者の意図を読む
5)映像化してみる
6)ルールメーカーになってみる
7)自分ウィキペディアを作ってみる
8)データ分析習慣をつける
9)自社を破壊する事業を考える
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 例えば「情報発信者の意図を読む」というトレーニングには、「事実と意見を識別し、意見、事実ともになぜ情報発信者がそういった表現をしているのかを考える習慣は、情報識別力を鍛える」と書いてありました(本書内では、もっと詳しい解説があります)。
 正しい問題解決や潤滑なコミュニケーションを行うことは、仕事をする上で不可欠なことだと思います。ここで紹介した以外にも、次のような参考になるアドバイスがたくさんありました。
・「面倒くさい奴」になることを恐れない(曖昧な部分を明確にすることはお互いにメリットがあると心得る)
・「答えらしきもの」に飛びついてはいけない
・「仮説の範囲外」を考える
・唯一無二の絶対的な解決策などほとんどない、などなど。
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 タイトルの『本質思考』がイメージさせるほどの深い内容ではなかった気がしますが、仕事を潤滑に動かすための心構えを教えてくれる本で、参考になりました。コミュニケーションで行き違いが多い、問題を解決したつもりだったのに何故か新しい問題が発生してしまう……などのトラブルを抱えている方は、ぜひ読んでみてください。解決のためのヒントを見出せるかもしれません。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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