『世界はこうしてできている 美しい物理のしくみ』2022/4/7
川村康文 (監修)

 自然現象や、人工物に秘められた物理のしくみを、美しいフルカラー写真とイラスト&図解でわかりやすく解説してくれる、本当に『美しい物理のしくみ』の本で、内容は次の通りです。
PART1 美しい自然現象の物理のしくみ
「雲はなぜ白いのか」
「美しい雪の結晶ができるしくみとは?」など
PART2 美しい人工物の物理のしくみ
「ラップはなぜ張り付く?」など
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 学生時代、物理は(当然)苦手科目だったので「美しい物理」? 馬鹿言ってんじゃねーよ、と思ったのですが……本当に美しくて、しかも分かりやすいし読みやすいという奇跡のような物理の本でした☆
「空はなぜ青いのか」とか「夕焼けはなぜ赤いのか」とか、お子さんから聞かれやすい質問はもちろん、「ナイアガラの滝のエネルギーはどれほど凄いのか」とか、「何もかもを飲み込むブラックホール」など、普通の人がごく普通に知りたくなるような仕組みを、写真とイラスト、簡潔な文章で解説してくれるのです。
 例えば、「雲はなぜ白いのか」については……
「雲自体には色はついていません。雲は、たくさんの水などの粒が集まってできています。水などの粒は空気の粒より大きいため、すべての色の光を散乱します(ミー散乱)。いろいろな色の光が集まると、私たちの目には「白色」に見えるのです。」
 ……なるほど(なお本書内では写真やイラストも使って、もっと詳しい説明があります)。
 また「氷の結晶は、なぜ美しい形状なのか」については、「水は凍ると六角形の粒(氷晶)になり、この粒が美しい雪の結晶に成長する」そうです。そしてまず「氷晶が六角形になる理由」としては、「水は凍ると隣り合う水分子同士で水素結合し、酸素原子は水素原子4つと結合した状態につながっていく。すると酸素原子はテトラポットのような位置取りになり、六角形を形作っていく。」……この氷晶の角にまわりの水蒸気がくっついて、雪の結晶へと成長していくのです(この記事にももちろん、美しい雪の結晶の写真や、もっと詳しい解説があります)。
 また「大地を切り裂く地球の割れ目(アイスランドの割れ目)」には驚きました。
「プレートの移動の一例として、ヨーロッパ大陸の北西に位置するアイスランドの大地に、大きな地割れがあります。アイスランドはユーラシアプレートと北アメリカプレートにまたがっており、プレート同士が反対方向に少しずつ遠ざかっているため、幅10メートルの地割れ(ギャゥ)が島の南北を貫いています。
 そのすき間には、プレートが新たに生まれています。地割れに沿って、地下からマントルが上昇してきます。そのため、絶えず溶岩が補給され、地割れは外側へと押し広げられているのです。1年に東西にそれぞれ1~1.5cmずつ、アイスランドの大地は常に広がり続けています。」
 ……ひゃー。でもアイスランドの大地は、幸いなことに今は溶岩で再びくっついて大地が拡大していますが、普通なら、単純に地割れした部分が川や海になっていくだけなんだろうな……。日本はプレートが押し付けられて盛り上がって(山脈になって)いますが、逆に引っ張られて割れている国があるなんて……地球の大地(プレート)は確かに動いているんですねー……。
 また「ラップが張り付く理由」は、「ファンデルワールス力(短い距離で向き合っている分子と分子の間で引きつける力)」と「静電気」により引き合う力が生まれて密着することが書いてありました。(知ってました?)
 さらに「弾丸がまっすぐ進む理由」は、「銃身の螺旋の溝で弾丸を回転させて、まっすぐに推進させているから」だそうです。
「拳銃、ライフル、大砲など、弾丸を発射する銃身の内側には、精密な溝が刻まれています。ライフリング(施条)と呼ばれる、幾何学的にも美しい螺旋の溝です。これは、弾丸をまっすぐに飛ばすために不可欠な機構です。
 弾丸がライフリングのある銃身を通過すると、空気が一定方向に流れて回転運動が生じます。高速回転するものは、風や空気の抵抗など外部から力が加わっても姿勢(方向)がふらつかないという性質があり、「ジャイロ効果」と呼ばれます。」
 へー……銃身には「溝」が不可欠だったんですね……。
 こんな感じで、世界のしくみを「物理」で明快に解説してくれるのです。一つ一つの記事はほぼ見開き1つだけで完結していて、写真やイラストも多いので、とても読みやすかったです。
 しかも「PART1 美しい自然現象の物理のしくみ」の方は、お子さんに「どうして、そうなるの?」と聞かれがちな自然の不思議に関することが多く、「PART2 美しい人工物の物理のしくみ」の方は小学校から高校(大学)までの理系の教科書で勉強するような内容が多いので、とても勉強になりました。ふりがなはありませんが、小学校高学年の方以上なら、なんとか理解できそうな感じなので、この本が家に一冊あると、お子さんからの「どうして?」攻撃にも安心して対処できそうです(笑)。……というより、さりげなく居間のテーブル近くに置いておくと、疑問を抱いたときに、お子さん自身で解決してくれるかも……。
 いろんな意味でとても「使える」『世界はこうしてできている 美しい物理のしくみ』でした。物理が得意な方はもちろん、私と同じように苦手だった方もぜひ読んでみてください。お勧めです☆
(物理が得意な方にとっては、分かり切った内容ばかりだと思いますが、写真が美しくて癒されますし、誰かに聞かれたときの解説の仕方として、とても参考になると思います。)
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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