『東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい 宇宙』2022/1/10
吉田 直紀 (監修)

 宇宙の誕生から現在に至るまでの歴史から、宇宙の未来まで……「宇宙」の謎について、生徒と先生の対話形式+イラストで、分かりやすく解説してくれる本です。
 最初にパラパラめくった時には、あまりにも文章がぱらっと書いてある「白い部分が多い本」だったので、うーん……文系というより子ども向けなのかもなー……と少し残念に感じたのですが、読み進めていくと、意外にも内容はかなり硬派でした(汗)。やさしい部分も多いけど、意外に難しい内容も含まれています。
「1時間目. 宇宙はどれほど広いのか」や、「2時間目. 宇宙はどのようにしてできたのか」は、宇宙の基本知識の紹介で、最新の基本的情報の勉強(復習)になると思います。
 個人的に参考になったのは、「3時間目. 宇宙には謎が満ちている」の「謎の物質:ダークマター」と「謎のエネルギー:ダークエネルギー」の話。
 正体不明の謎の物質のはずのダークマターが必要になるのは、それがないと説明がつかない現象があるからで、例えば、「渦巻銀河は中心に恒星が集中していて、外縁部になるほど回転速度が遅くなるはずなのに、内側と速度がほぼ同じなのは、銀河をダークマターがおおっていると仮定し、その重力の効果を計算に入れる必要がある」そうです。
 ダークマターの正体は不明ですが、次のような性質を持つと考えられています。
1)見えない
2)普通の物質をすり抜ける
3)質量を持つ
 また、ダークマターを探索する実験(DAMAやXMASS)の記事では、次のようなことが書いてありました。
「実は太陽系は、天の川銀河の中で止まっているわけではなく、「公転」しています。
 天の川銀河にはダークマターが広く分布しているので、太陽系はダークマターの中を突き進んでいることになります。そのため、地球はダークマターの「風」を受けることになります。
 一方、地球は太陽のまわりを公転しているため、地球が受けるダークマターの「風」は季節によって変わるはずです。
 その結果、地球をすり抜けるダークマターの量、すなわち実験装置の中でダークマターをキセノンが衝突する回数には季節変動が生じると予想されているんです。」
 ……へー、そうなんだ……。もっとも、残念ながら、まだ実験での確証は得られていないようですが……。
 そしてなんと、「全宇宙の68.3%をダークエネルギーが、ダークマターが26.8%、普通の物質は4.9%を占める」そうで、実は私たちは、宇宙のことをほとんど知っていないそうです!
 また興味津々だったのが、「5時間目. 宇宙の未来」の、天の川銀河とアンドロメダ銀河の話。なんと「数十億年後に、天の川銀河とアンドロメダ銀河は大衝突を開始すると考えられている」そうです!
 ぎゃー!! と思いましたが、実は恒星同士はぶつからないそうです。銀河はスカスカなので、両銀河は衝突後、互いの重力の作用で大きく形をくずじながらも、「する抜ける」ことになるのだとか(両銀河がすり抜けたあと、太陽系がアンドロメダ銀河に持っていかれる可能性も約3%ほどあります)。
 そして、いったん離れた後も、互いの重力で再び引き合って……二つの銀河はこうした衝突を繰り返して、約60億年後には最終的に一つにまとまって、巨大な楕円銀河になると考えられているそうです。その頃には、太陽の中心部で核融合の燃料である水素が尽きて、太陽も「おだやかな死」をむかえるようですが……。
 宇宙の終りには、次の3つの可能性があるそうです。
・宇宙の終りシナリオ1:ビッグフリーズ、ビッグウィンパー(宇宙が膨張をつづけた結果、ほとんど空っぽになって終わる)
・宇宙の終りシナリオ2:ビッグリップ(空間の膨張速度は無限大に達し、宇宙は引き裂かれて終焉をむかえる)
・宇宙の終りシナリオ3:ビッグクランチ(宇宙空間全体が1点に収縮し、つぶれて終焉をむかえる)
 ……もっとも私たちはまだ「宇宙のことをほとんど分かっていない」状態なので、宇宙の終りも、これ以外のシナリオが無数にあるのかもしれませんね……。
 宇宙について現在分かっていること、謎のことを、対話形式+イラストで分かりやすく教えてくれる本でした。宇宙の基礎知識を知りたいと思っている方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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