『シュレディンガーの猫:実験でたどる物理学の歴史 (創元ビジュアル科学シリーズ2)』2017/2/10
アダム・ハート=デイヴィス (著), 山崎 正浩 (翻訳)

 古代ギリシアの四大元素からヒッグス粒子検出実験まで、代表的な50の実験によって、物理学を概観している本です。
 量子力学で有名な「シュレディンガーの猫」がタイトルと表紙イラストになっているので、難解な量子力学が中心になっているのだろうとヒヤヒヤしながら読み始めましたが(汗)、古代ギリシアからの代表的実験がそれぞれ数ページで紹介されるという、一般の人向けの「物理の歴史」をたどる本でした。タイトルになっている「シュレディンガーの猫」の話も数ページだけなので、この話が目的の方には物足りないかもしれません。でも、物理の代表的な実験の意義や内容が、エピソードもまじえて簡潔に紹介されているので、私と同じように物理学にあまり詳しくない方(苦手な方)にも、読みやすいのではないかと思います。しかも本のページが薄いクリーム色で、カラーのイメージイラストが豊富にあり、全体として「お洒落な古文書風の科学歴史書」という感じに作られているので、意外に(?)気軽に読めると思います。
 個人的に「おお!」と驚かされたのは、「第3章 広がる研究領域 1761年~1850年」の「世界の質量をどう量る?」の世界の質量の測り方(笑)。ニュートンは『プリンキピア(1687刊行)』の中で、下げ振り(糸の先に重りをつけたもの)は常に地球の中心に向けて鉛直方向に吊り下がるが、近くに山がある場合には、例外的に山の方へ少し引っ張られると指摘し、これは巨大な山が生み出す引力による影響だと説明しているそうですが、それをもとに、実際に山の近くで「下げ振りの引っ張られ方」と「山の体積」を測ることで、地球の質量を測った(推定した)人がいるそうです。
「それから80年後、王立グリニッジ天文台長だった天文学者のネヴィル・マスケリンは山がもたらす引力の影響を計測できるなら、地球の質量を計算できるのではないかと気づきます。山のそばで下げ振りをたらす方法があれば、どれほど横に引っ張られるかを測って山の質量を推定し、さらに地球の質量を推定できるのです。この実験は、地球の惑星の質量を計算可能にするという点で非常に重要な意味を持っていました。」
 ということで、その計算と計測結果には436mの違いがあり、「この差が生じた原因は、マスケリンの下げ振りが山の引力に影響され、歪んだ「鉛直方向」を指し示したためです。」さらに、(このことは、)地球の平均密度が山の平均密度よりもはるかに大きいことを示したので、地球中心核は空洞ではなく金属に違いないと想定されたのだとか! ちなみに、この実験の結果、マスケリンは地球の質量を5×10の21乗トンと計算したそうですが、前世紀にはニュートンが6×10の21乗トンと見積もっていたそうです。こんなスケールの大きい実験があったんですね!
 またその次の記事「世界の質量をどう量る(山は使わずに)?」では、その20年後に、キャンヴェンディッシュが、「山々の代わりに鉛の球を使ったモデル」を使って、マスケリンが量った質量を検証した実験が紹介されていましたが、その結果、地球の平均密度は水の5.48倍と推定されました。現在認められている地球の質量は、5.97×10の21乗トンだそうなので、結局、ニュートンの推定値が一番近かったのですが、こんなスケールのものを「実験」で検証する方法を考えて、実際に「実験」してしまうところが本当に素晴らしいです。
 この本は、このように歴史的に有名な実験が古い時代のものから順を追って紹介されるので、教科書にのっている「物理のさまざまな定理」が、もともとはどのように実験されたのかを通じて理解することができて、とても勉強になります。物理は苦手なんだけど、大学受験などのために勉強して苦手を克服したい、と考えている方にとっては、理解の助けになるのではないでしょうか。ぜひ読んでみてください☆
   *    *    *
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
<Amazon商品リンク>