『サイエンス5000年史』2021/2/28
メアリー・クルーズ (著), 有賀 暢迪 (監修)
美しいイラストと数々の興味深いエピソードとともに、数学、医学、化学、物理学、脳科学、遺伝学、コンピュータサイエンスまで、人類の科学の歩みをたどる本です。
古代からの科学の流れを、それに関連する絵画やイラスト、写真とともにじっくり読むことが出来て、科学の歴史をまとめて再整理することが出来ました。
例えば、次のようなエピソードは、初めて知りました。
「第4章 地理学」より。
「12世紀にはいると、北アフリカの地理学者ムハンマド・アル=イドリーシーが、世界地図『タブラ・ロゲリアナ』を作成しました。この世界地図には、土地の物理的な特徴のほか、その土地特有の文化や政治の特性などが記載されていました。シチリアのルッジェーロ2世から命ぜられたアル=イドリーシーは、この世界地図の制作に15年の歳月を費やします。その正確さは見事で、その後しばらくは匹敵するものが出てこなかったほどです。」
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「第15章 コンピュータ科学」より。
「コンピュータ科学の物語が実際に始まったのは、初期の数学が発展した古代メソポタミアの時代です。少なくとも紀元前1100年頃から、メソポタミアの地域では計算盤が使われており、原始的な計算器もつくられていました。紀元前100年頃にコンピュータの先祖が開発されていたことを示す証拠が、1901年に発見されています。地中海で見つかった古代の難破船のなかに、さびた金属のかたまりが残されていたのです。これはコンピュータ科学の歴史において、最も重要な考古学的発見となりました。この金属のかたまりは、発見された地域にちなみ、「アンティキティラ島の機械」と名づけられ、現在では世界最古のアナログコンピュータとして知られています。歯車を利用して日食や太陽の動きといった天文現象に関する情報を計算する、機械式計算機のようなものでした。当時の人々は、このような機会をつくるために必要な知識をもっていたのですが、数世紀、時代が進むうちに、その知識は失われていってしまったようです。」
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科学の常識として知っておかなければならないような歴史知識を、まとめて読むことが出来るので、自らの教養を高めるのにもぴったりだと思いました。ちょっと厚めのニュートン別冊という感じで、内容もイラストや写真が豊富なので、読みやすいと思います。
ただ……全体が「古代」「中世」「近世」「19世紀」「20~21世紀」「科学の未来へ」の5部編成に分けられているのに、特に「近世」以降の内容には、そのジャンルの古代から現代までが書いてあるので、少し混乱させられてしまいました。例えば「近世」に入っている「天文学」や「化学」にも、古代から現代までの歴史が書いてあります。むしろ全体を「概要」と、「各学問分野」の二部構成に分けて並べなおした方が、より分かりやすくなったのではないのでしょうか。
それはともかく、全体としては、とても楽しく読めました。古代の地図や書物の写真や、中世の科学者たちの絵画に添えられているエピソードは、科学博物館などの展示で見るような内容なので、自分専用の科学博物館(科学の歴史コーナー)を見ているような感じ☆ 大人向けの本ですが、小学校高学年や中学生の科学好きのお子さんも、喜んで読んでくれそうです。科学好きの方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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