『機械昆蟲制作のすべて 進化し続けるメカニカルミュータントたち』2016/12/24
craft factory SHOVEL HEAD 宇田川誉仁 (著), 角丸つぶら (編集)

 空想上や実在する生き物から着想を得て作品を制作している宇田川さんが、紙粘土や針金、機械パーツ類、廃材などでつくった「メカニカルミュータント」の作り方を写真で詳しく教えてくれる本です。
 例えば、表紙の作品は「ミカドトックリバチ」の機械昆蟲。「実在の昆虫を本物そっくりでメカっぽい外観に仕上げた作品」の一つです。表紙を見ただけでも凄いことは一目瞭然ですが、作り方の手順を追って各パーツを見せてもらうと……本当に技術力がもの凄くて……身体は紙粘土、関節はボルト、ナットで出来ているのに……ひっくりかえった腹も、薄いグラデーションに色づいた羽も、なんだかすべてが本物以上に本物の虫っぽくて……見ていると背筋がぞわぞわします……。だからこの本は、工作好き、機械好き、そして昆虫好きの方にお勧めします(私自身は……昆虫は苦手ではないものの、好きってほどではないので、うーん……もう少し玩具っぽい感じの方が良かったかも……)。
 さて(気を取り直して)、本書の内容は次の通りです。
 第1章は大型(約20cm)の1点もの作品、ミカドトックリバチ。紙粘土で本体をつくり、盛りつけと削りで成形を進め、細部をつくり込んでいく独自の工程を解説してくれます。
 第2章は小型(約5cm)のコガネムシ作品群。原型からの型取り工程後に、塗装や細部の加工に変化をつけて個性的な甲虫に仕上げる様子を解説しています。
 第3章は木材や金属を組み合わせてつくったスチームパンク的なトックリバチの「巣」。
 さらに巻頭と第4章には、新作から過去の代表作まで主要な作品が収録されています。

 機械昆蟲たちは、紙粘土の本体に金属部品の関節、随所にハンダで金属ラインを入れるという方法で作られています。表紙のミカドトックリバチの目も、もとは紙粘土。それに下地と塗装をして、偏光性塗料+クリアで仕上げているのです。これ、向きを変えると紫色に変化するものなのだとか。口のオオアゴも、もとは厚紙。それにエポキシパテで肉付け後、カッター、紙やすりで成形し、黒とシルバーで塗装しているのですが……なんか金属のハサミみたいな感じですよね……。そして羽は、図案(本物の羽のイラスト?)通りに銅線で翅脈をつくってハンダづけし、それをディップ液にひたして透明な膜をつくってから塗装しているのです。
 このように制作過程を写真で詳しく見せてくれます。かなり技術的に凄いので、素人が真似できるような気はあまりしませんでしたが……。
 それにしても、もとが紙粘土でも、厚紙でも、廃材のプラスチックの蓋でも、塗装によって、こんなにも金属っぽくなるんですね……真似したいと思いました。
 第2章では量産のための原型の型取りの仕方、第3章は展示用のベース作りを例に、木材や金属を合わせて作品を作る方法など、さまざまな技術を惜しみなく教えてくれます。
 そして最後は宇田川さんの作品ギャラリー。どれも本当に生きて動く機械の昆虫みたいで……とにかく見ごたえタップリです(ぞわぞわしますが……)。
 昆虫が嫌いな方にはちょっとつらいですが、工作好きの方には、とにかく参考になる技法、アイデアのヒント満載で宝物になりそうな本です。道具の紹介もあります。ぜひ眺めてみてください。お勧めです☆
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