『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』2020/12/17
吉森 保 (著)

「オートファジー」の世界的権威の吉森さんが、細胞、抗体、ウイルスなどの生命科学について解説してくれる本です。
 細胞や免疫についての話も参考になりましたが、なんといっても興味津々だったのが、「オートファジー」の話。「オートファジー」とは、「細胞の中のものを回収して、分解してリサイクルする現象」のことで、「細胞を自分の力で新品にする(細胞を若返らせる)機能」をもっているそうです。その役割は、主につぎの3つなのだとか。
1)飢餓状態になった時に、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にする
2)細胞の新陳代謝を行う
3)細胞内の有害物(病原体も)を除去する
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 私たちの体内では、「毎日240gのタンパク質が分解され、新しいタンパク質に生まれ変わっている」そうです。でも、毎日食べるタンパク質は約70gだそうなので、計算が合いません。しかも食事でとったタンパク質は、ほぼ全量がエネルギーとして使われてしまうのだとか。
 実は、すでに細胞の中にある240gのタンパク質を、主にオートファジーで分解して作り直しているのだそうです。しかもそのやり方は、「あたりにあるものを古くても新しくても手当たり次第回収して壊します」という荒っぽさ(笑)。でも、このオートファジーのおかげで、私たちは細胞の新陳代謝などが行えて、健康でいられるんですね。
 オートファジーが防御的に働いていると考えられる病気には、次のようなものがあるそうです。
1)生活習慣病
2)神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)
3)肝臓がん
4)腎臓の病気
5)心不全
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 しかもオートファジーは、老化防止にも役立っている可能性が高いそうです。
 ……うーん、だんぜん自分のオートファジーを活性化したくなってきました。この本では、そのための方法として、次のようなことが推奨されていました。
・納豆、キノコ、赤ワインとチーズがいい
・腹八分で、運動する。脂っこい食事を避ける。
 ……これらの方法は、ごく普通の健康法としても推奨されているものが多いので、私も今後、心掛けるようにしたいと思います。
 細胞や免疫、オートファジーなど、「長生きせざるをえない時代」に知っておく価値のある生命科学講義をしてくれる本でした。健康で長生きしたいと願っている方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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