『「音」を理解するための教科書』2021/2/8
米村 俊一 (著)

「音」の不思議さや面白さ、「音」に関わる技術の面白さについて、人と音との相互作用(interaction)という観点から総合的に解説してくれる本で、内容は次の通りです。
1 人間はどうやって音を獲得したのか?
2 音が聴こえないとどのように困るのか
3 そもそも「音」とはなにか?
4 われわれは音をどのように聴いているのか?
5 耳から受け取った音を脳はどう処理するのか?
6 人間はどうやって言葉を発するのか?
7 人間は音楽をどうやって認知しているのか?
8 音はどうすれば記録・再生できるのか?
9 コンピュータで音を扱うディジタルオーディオとは?
10 遠隔地に音声をどうやって伝送するのか?
11 音声合成/認識はどんな仕組みで動くのか?
12 音響・音声処理技術はどう活用されているのか?
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 この目次でも分かるように、「音」に関して総合的網羅的に説明してくれています。
 例えば、最初の章は生命の進化からみた音。生物は約5億4000万年前のカンブリア紀にすでに目(視覚)をもっていましたが、聴覚が出現するのは約3億8500万年前、脊椎動物が生まれてからだと考えられているそうです。
「聴覚は動物にとって、個体や集団の防衛、食料の確保、繁殖の成功など、生きていくための遠隔センシングおよびコミュニケーションで欠かせない必須機能」なのに、出現したのは視覚より、かなり後だったんですね!
 また、なんと植物も、聴いたり、見たり、匂いを嗅いだりしているそうです。例えばマツヨイグサは、花粉を媒介するハチの羽の振動を感じとってから数分のうちに、花の蜜の糖度を上げることなどが発見されています。その他にも、バクテリアのコミュニケーションを盗聴して、頃合いを見計らってバクテリアに総攻撃を開始するウイルスも発見されているそうです。……そうだったんだ。
 さて音の知覚における基本的な属性は、「音の大きさ」「高さ」「音色」ですが、大きさや高さは分かりやすいけど、「音色」ってどんな風に表現されるんだろう? と思っていたら、「音色は、音の高さの基準となる基音に倍音が重ね合わされて形成されます。」なのだとか。「どのような倍音がどのような大きさで含まれているのか、その含有率の違いでさまざまな音色が生まれるのです。」……ピアノとバイオリンでは、音程は同じでも音色がまったく違って聞こえるのは、そのためだったんですね。
 その他にも、録音した自分の声を聴くと、普段自分自身が聴いている声と異なる印象を受けるのは、耳から聞こえる声と、声の振動が骨を伝わってくる骨導音が合成されているから、など、「音」に関するいろんな情報を知ることが出来ました。
「7 人間は音楽をどうやって認知しているのか?」では、視覚にゲシュタルト(ひとまとまりとして知覚しようとする機能)要因が関わる7つの法則(近接、類同、連続、閉合、共同運命、面積、対称性)があるように、聴覚でもゲシュタルト認知が起こることが説明されていました。例えば、途切れ途切れの音の途切れた部分にホワイトノイズを補うと、途切れているはずの部分がつながって聞こえるように補完してしまうような現象が、ゲシュタルト認知の一例だそうです。
 また「12 音響・音声処理技術はどう活用されているのか?」では、「超音波を発生させてキャビテーションを起こすことで、さまざまな材料の加工や切断をする」とか、「対象物に超音波をあててその反射波を画像化する(エコー検査)」など、聴覚以外の活用法なども紹介されています。
「音」に関する総合的な参考書でした。とても広範囲な内容になので、一つ一つは概要レベルの解説になってしまい、専門家の方には物足りないかもしれませんが、少なくとも他の人に説明するときや、自分の知識を再整理するのに役立つと思います。読んでみてください。
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