『粘土でつくる空想生物 ゼロからわかるプロの造形技法』2018/9/20
松岡ミチヒロ (著)
機械仕掛けのクジラやウサギの作品を事例として、金属線やチューブでメカニカルなディテールを表現する方法など、魅力的なオリジナル造形作品をつくる工程を、造形作家の松岡ミチヒロさんが、びっくりするほど細かいところまで詳しく説明してくれる本です。
おおまかな制作の流れは次の通りだそうです。
1)イメージスケッチ
2)芯材の作成(断熱材などでおおまかな形をつくる)
3)粘土での造形(石粉粘土、樹脂粘土、エポキシパテなど)
4)ディテールを加える(糸はんだ、チューブなどの利用)
5)塗装(サーフェイサー、ラッカー塗装、アクリル絵の具など)
6)仕上げ(ウェザリング、チッピング、クリアー塗装など)
1章は「粘土による大型作品の制作」。表紙のクジラ型の空想生物「鯨型汚染大気浄化船」の制作を、最初から最後まで丁寧に解説してくれます。
芯材は「押出法ポリスチレンフォーム」を使っているそうです。これは一般的な発泡スチロールに比べてきめが細かく、比較的粘土が食いつきやすい素材なのだとか。
それを薄く伸ばした石粉粘土で包み、よく伸ばして整え完全乾燥させた後、布ヤスリで表面をなめらかにします。布ヤスリは紙ヤスリに比べて丈夫で、曲面の研磨がしやすいそうです。……こんな感じで、作品制作に利用している素材や道具を、とても詳しく写真で解説してくれるのです。
クジラをすごくメカっぽく見せている金属の管っぽく見えるものは、糸はんだです。この糸はんだの使い方がすごく見事で作業もとても丁寧、細かい所まで手抜きなく作り込まれていて感動させられました。
さらに作品に現実感をつけるための塗装、わざと汚しを加えるウェザリングや、塗装剥がれのような表現のチッピングの技法も凄くて、こんな風にやると上手くいくんだ……と食い入るように見入ってしまいました。
その他にも、ウサギがモチーフの作品では、樹脂粘土で造形するために芯材にはアルミホイルを使う(オーブントースターで加熱しても支障がないようにするため)など、さまざまな技法を紹介してくれます。
粘土をこねて柔らかい生き物のフォルムを表現する方法、金属線やチューブでメカニカルなディテールを表現する方法、アクリル絵の具を使った汚し塗装のテクニック……プロの技をこんなに細かく具体的に教えてくれて、本当にいいんですか? と恐縮してしまうほど、参考になる技術が満載でした☆
最後の作品ギャラリーにまで作品の作り方の簡単な解説があって……例えばフクロウという作品には、首周りにファー素材が使われています。これも本当に素敵で、いつか真似してみたい☆
生物と機械を融合させた、スチームパンク調の作品で多くの人々を魅了する造形作家・松岡ミチヒロさんが、実際の作品を使って粘土造形プロセスを詳しく公開してくれる本です。その特徴である、長い年月を経て朽ちたメカの味わいと、生物が持つ柔らかなフォルムを持つ造形が、どのようにつくられているのか詳しく知ることが出来て、凄く参考になる本でした。
工作好きの人にとっては、お宝になるような凄い教則本です。ぜひ眺めてみてください。だんぜんお勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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