『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』2019/4/27
崔 真淑 (著)
30年分の経済ニュースを、整理して分かりやすく教えてくれる本です。
加速するグローバル化から米中覇権争い、第四時産業革命まで、社会人として最低限知っておきたい「世の中のしくみと経済の考え方」と「経済数字と経済学用語」が、やさしい解説とシンプルな図解で分かります。ひととおり読むだけで、これまでの社会や経済の流れの大筋が、なんとなく理解できたような気がしました。
しかも「30年分の経済ニュースのポイント情報」を教えてくれるだけでなく、私たち読者の知識となるよう、経済学の視点で解説することを心掛けてくれているので、とても分かりやすかったと思います。「知識になる」とは、「関連した経済ニュースを読み聞きしたときに、ビジネスや生活にどんな影響が起こりうるかの予測や仮説を立てる際の糧になるということ」だそうです。
まず「Prologue」には、「5分でつかむ戦後の世界経済」と「5分でつかむ戦後の日本経済」があり、本書で解説してくれる内容の概要をさらっと教えてくれます。これが次章以降を読むための準備運動になります。
そして「lecture1 世界経済の動きをつかむ」、「lecture2 日本経済の動きをつかむ」、「lecture3 日本企業の盛衰を読む」、「lecture4 令和の日本が書ける問題」、「lecture5 デジタル覇権をめぐる争い」、「おわりに」、「参考文献」と続いていきます。
例えば、「lecture1 世界経済の動きをつかむ」では、先頭にこの章のテーマの「戦後の世界経済の動きの概要」が1ページにまとめて書いてあります。
続いて最初の記事「01 社会主義が失敗したのはなぜ?」では、社会主義国家・ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)が、91年12月に、ソ連解体と独立国家共同体(CIS)の創設が決定されたことで消滅したことが書いてあります。社会主義は共同体の論理で動くはずだったのに、人々が自己利益を追求して社会全体が巨大な非効率に陥ったことなどが理由のようです。
そして「02 世界的な通貨危機が生まれた理由は?」、「03 ドットコム・バブルとはなんだったのか」……というように、「疑問への答え」という方法で、経済や社会の記事を解説してくれるのです。
それだけでなく、この記事を読むための基礎知識に関しても、イラスト付きで解説してもらえます。例えば「01 社会主義が失敗したのはなぜ?」の場合は、「資本主義と社会主義、共産主義のちがい」とか、「GDP(国内総生産)とは?」など、この記事で出てくる経済用語などの解説やコラムが掲載されていました。これらは一般常識レベルのものなので、知っている方は読み飛ばしても問題ないと思いますが、知らない用語があっても、こんな感じですぐに解説してもらえるので、便利で分かりやすいと感じました。
まさに、「最低限知っておきたい世の中のしくみと経済の考え方」と「経済数字と経済学用語」を、やさしい解説+シンプルな図解で教えてもらえる本だったと思います。社会人として、知っておきたい「社会の一般常識」を、いっきに学び直すことが出来ました。
ただし内容が広範囲にわたっているので、これを「1時間で学べる」人は、すでに経済や社会の常識がすっかり頭に入っている人だけだと思います。普通の人は、たぶん3~5時間ぐらいはかかるでしょう。でも時間をかけても読むだけの価値はあります。特に、これから新社会人になる方には、すごく参考になるのではないでしょうか。
また、すでに社会や経済の動きには詳しい方にとっても、自分の知識を再整理することが出来ますし、他の人に説明するときの参考にもなります。
「世の中のしくみと経済の考え方」に関する自分なりの判断基準を培うための基礎知識を、分かりやすく教えてくれる本でした。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
(なお、ここでは現時点(2021.02)での最新版(2019年)を紹介していますが、今後改訂版が出る可能性もあるので、購入する場合は、最新版かどうかを確認してください)。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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