『化石の探偵術 (ワニブックスPLUS新書)』2020/10/8
土屋 健 (著), ロバート・ジェンキンズ (監修), & 1 その他

 化石の見つけ方や研究の方法を読んで体験できる本です。
 この本の「はじめに」には、「古生物学」の手法は、まさに探偵学だということが書いてありました。
「化石という手がかりを中心に、周囲に散らばるさまざまな物的証拠・状況証拠を探し出し、読み解き、その化石を残した古生物に迫っていく……良質の推理小説のような、そんな楽しさが古生物学にあります。」
 その化石の探偵術を具体的に教えてくれるのですが、まずは「第零部 探偵術を知る前に……基礎知識編」として、「おおよその生命史」や恐竜に関する概要知識も紹介してくれるので、古生物学の初心者でも、内容を理解しやすいのではないかと思います。
 そしていよいよ「第壱部 徒手空拳は似合わない(アイテム編)」。化石の探し方の解説が始まります。
 化石探しに適した場所というのは、「等高線と等高線の間隔が狭い場所(崖など)の沢や川沿い」だそうです。……化石発見場所というと、確かに「崖」のことが多かったような気がしますが、実は土の崖ではなく、岩の崖がいいそうです。というのも、「土は有機物などの栄養分と水分をよく含み、植物が根を張るもので、基本的に土壌には化石は含まれない。」ので、沢や川沿いなど、土が洗い流されている崖が狙い目なのだとか。
 そして持参する地図は、細かい地図の方が望ましいそうです(記録する場合も、場所の特定がしやすいから)。
 さらに探す道具として、ハンマー、クリノメーター、タガネ、ルーペ、地質図と地形図、記録用ノートと各種筆記具、折り尺、携帯電話、カメラ、サンプル袋など、他にもいろいろなものが紹介されていました。
 そしていよいよ化石を発見したら、次のことをやっておくべきなのだそうです。
1)位置の記録
2)化石と地層の観察(化石と地層のカメラ撮影)
3)掘り出し(掘り出し過程でも記録、観察を随時行う)
 ……ここまででも、十分すぎるほど「探偵」っぽかったのですが、発見された化石に関する推理の方法も、まさに「探偵」そのもの。
 化石が発見された露頭の観察から、そこがどんな場所だったのかを推定します。例えば、地層をつくる粒子のサイズに着目すると、大きな岩石が入っている場合は内陸、粒の大きさが分からないほど小さければ遠洋だったと推定できますし、入っている礫に着目すると、角ばった礫ばかりなら内陸の上流域、丸みをおびていれば中流から下流。平たくなっていれば下流域など、さまざまなことが推定できるそうです。発見場所の詳しい観察は、とても大切ですね!
 また化石が集団で発見された場合は、乱れがあるか規則性があるかに着目。乱れがあれば、死後に運搬された可能性が高く、規則性があれば、その集団は死の直前にその場所にいた可能性が高いそうです。
 この他にも「クリーニングを終えた化石をあえて白くすることもある(白くすると凸凹の影がより明瞭になる)」とか、「化石のCTスキャンで骨肉腫が分かったこともある」とか、参考になる話がたくさんありました。
「化石」はたまたま見つかるわけではなく、地層の観察などを行って「出やすい場所」を推定して見つけるとか、発見した時には、正しい推定をするための「証拠」を可能な限り採取するとか、これまでの知見や現場の証拠を総合して、化石が生きていた時の姿を推定するとか、虚構の推理小説よりも面白いリアルな『化石の探偵術』を教えてもらえる本でした。とても面白い上に勉強にもなるので、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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