『災害に負けない家を造ろう』2020/10/23
保坂貴司 (著)

 木造住宅の構造リフォームについて解説してくれる本です。
 木造住宅はほとんどの場合、リフォームが可能だそうです。その時に大事なのは、構造調査を行って「構造リフォーム」すること。築後30~40年間は、建てかえというよりは、リフォームの時と位置づけて、「構造リフォーム」するといいそうです。
「第1章 地震被害の事例から学ぶ」では、地震で被害を受けた建物の写真を多数見ることができました。かなり悲惨な状況で、地震発生時にこのような状況にならないよう、耐震性能の向上を図ることは大切なことだな……と痛感させられました。
 地震で被害が多かった事例には、次のものがあるそうです。
1.地盤に問題がある場所に立つ建物
2.生物劣化の多い建物
3.基礎に問題のある建物
4.基礎、劣化を含めた柱脚部の被害
5.接合部の被害
6.壁の少ない建物
7.メンテナンス不足
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 そして「新築にしろ、リフォームをするにしろ、立地条件、つまり地形、地盤、環境を把握することが何より大切なのです。」といって「構造調査」することを勧めています。
「構造調査は、耐震性の調査はもちろんのこと、地盤、劣化の状況、鉛直荷重、湿度、室温、仕上げ、設備など、総合的な観点から調べます。調査費用を無駄なものと思われる人もいますが、それは建築というものを知らないからです。調査は、まず「家の問題点」から調べます。無駄な費用を使わず、効果的なリフォームをするためです。リフォームの成否は調査にかかっているといっても、過言ではありません。」
 ……確かに、その通りですね。特にリフォームの場合は、地盤の他、現在の家の構造上の問題をきちんと把握しておかないと、リフォーム後も問題が残ったままになってしまうでしょう。
 この本は、「構造調査方法」や「構造リフォームの事例」なども具体的に解説してくれるので、専門知識があまりなくても構造調査や構造リフォームの概要を知ることができました。
 特に参考になったのが、「第4章 構造リフォームと補強事例」。基礎や耐力壁、接合部の補強など建物の構造リフォームはもちろんのこと、なんと「地盤改良と土留」、「土留、擁壁の補強」などの地面の構造リフォームの事例も見ることが出来ました(写真もあります)。
「地盤改良と土留」の例は、なんと約15センチもの不同沈下を起こしている住宅。「まず室内側の床をはがし、地盤を約60センチほどすき取り、地盤改良を行いました。」ということで、ポルトランドセメントをまぜながら締め固め、内壁側に基礎を設け、土台を敷き、柱を立て、内壁を設け、二重の壁としたそうです。2階床はブレースで水平構面の補強。外壁はサイディングに変えることから接合部の補強後、断熱材を入れ、構造用合板を下地貼りとして耐力壁を設けた、ということですが……家が建っている状態で、地盤改良すら行えるとは……構造リフォームって凄いですね。
 ちなみに「大規模リフォームの内容」としては、次のようなものがあるようです。
1)劣化対策(雨漏り・腐朽・蟻害)として耐久性の向上
2)不同沈下の修復
3)基礎の補強
4)耐震性能の向上
5)防湿対策
6)断熱性の向上
7)電気配線・空排水管の取替
8)厨房・浴室・便所・洗面所の改修
9)バリアフリー化
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「大規模リフォーム」になると、新築にかなり近い(60~70%)ほどの費用がかかることもあるようです。新築と大規模リフォームの費用の比較例も紹介されていました。
 木造住宅の構造リフォームの概要を学べる本でした。とても参考になるので、リフォームを考えている方は、ぜひ一度、読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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