『マンション防災の新常識』2020/11/7
釜石 徹 (著)

 直下型地震などの大災害が発生した際、マンション住民が身を守るための第一の選択肢は「在宅避難」。マンション防災士の釜石さんが、マンション防災の新しいあり方を、実例を交えて具体的に解説してくれる本です。
「大地震がきたら地域指定の避難所へ……」というのが一般的なのだと思っていましたが、新型コロナが発生してから、避難所のいろんな問題(3密(密集・密接・密閉)を避けられない、収容人数に限りがある)などがクローズアップされ、避難所に行くと別の危険にさらされるのかも、と心配になってしまいました。
 釜石さんは「マンション居住者は、逃げずに自宅にとどまっているほうがよほど安全」だと言っています。しかも避難所に行っても、「水や食料をもらえない」ことがあるのだとか! 実は、避難所の食料や水は収容人数分しかないので、希望通りの食料や水を手に入れられない(避難所に避難している人しか、もらえない可能性が高い)そうです。……そんな馬鹿な……と愕然としてしまいましたが、避難所の備蓄食料でなく、「救援物資」ならば在宅避難者でも受け取れるそうです。ただし救援物資が届くのは、どんなに速くても3日目以降、大災害なら1週間以上かかるので、それまでの間の水や食料は自分で備蓄しておく必要があるのだとか。
 この本は、マンション住民は災害に備えて何をしておくべきか、そして災害が起こった時にはどうすべきなのかを、とても具体的に教えてくれます。
 例えば、被災直後には、近隣住民に自分の安全を確認してもらうため、自宅ドアに「私のところは無事です」というプレートを出すことなどが書いてあります。ちなみに、この時「〇〇に行っています」と表示するのは防犯対策状良くないので、不在を示す内容の表示は絶対にしてはだめなのだとか……これ、やってしまいそう(汗)。忘れないようにしなければ……。
 また「これだけは決めておきたい(マンション防災)対策のルール」は、次の通りです。(もちろん内容は、本の中でさらに詳しく解説されています)
1)支援を希望する人が申告できる制度
2)マンション側では食料・飲料水の備蓄をしない
3)断水したらトイレの汚物を無理に流さない
4)災害発生時は生活ゴミやトイレゴミを自宅で保管する
5)避難所にはいかずに在宅避難する
6)災害発生時はご近所や同じフロア内で簡易レスキュー
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「マンション側では食料・飲料水の備蓄をしない」など、マンションの災害対策本部に頼らず「自分の身は自分で守る」のが基本だそうです。……ちょっと厳しいような気もしましたが、考えてみれば、マンションの対策本部はそれを本業としているわけではないことが多く、災害当日に担当者が不在になっている可能性もあるわけで……最初からこのように明確に言われている方が、むしろ現実的だと思いました。
 そして、マンションでは、「災害が発生しない場合の防災訓練」として、次のようなことをしておくと、いざというときに役に立つそうです。
1)閉じ込められた人を救出するために部屋に立ち入る方法と道具の確認
2)自宅でケガをしないための講習会
3)「ポリ袋調理法」の講習会(着火訓練を含む)
4)災害時トイレ処理の講習会
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「ポリ袋調理法」などはとても実践的に役に立ちそうだし、これらのことを行っておくと、自宅に何を備蓄しておくべきかの具体的な商品も分かっていいなと感じました。(例えば、カセットコンロやカセットボンベ、食品湯煎調理袋(ワタナベ工業)、スーパーデリオス携帯浄水器、匂いのもれないBOS防臭袋など)
 この他にも、災害発生直後からの行動を具体的に記載した「1枚のマンション防災マニュアル(目立つ場所に常時掲示)」など、すごく参考になる情報が満載。マンションだけでなく、一戸建てに住んでいる方にも役に立つ情報があると思います。ぜひ一度、家族みんなで読んでください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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