『知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代 (光文社新書)』2014/5/15
田坂 広志 (著)

 なぜ高学歴の人物が、深い知性を感じさせないのか? 目の前の現実を変革する「知の力」=「知性」を磨くための知性論です。
「高学歴なのに深い知性を感じさせない不思議な人」がいるのは、「知識」はあるものの「知恵」が足りない人がいるからのようです。「知識」とは、「言葉で表せるもの、書物から学べるもの(いかに速く効率よく学べるかの秘訣が存在)」で、「知恵」とは、「言葉で表せないもの、経験からしか学べないもの(いかに速く効率よく学べるかの秘訣は存在しない)」。そして「知性の本質は、知識ではなく知恵」なのです。
 私たちは「高度な専門性」を持った人を「高度な知性」を持った人と考えがちですが、現代は、高度な「専門性」を持った優秀な「専門家」が、問題を解決できないという状況が起こっています。たとえば地球温暖化問題なども、その一つ。
 現在、求められているのは、「様々な専門分野を、境界を越えて水平・垂直的に統合」できる「スーパージェネラリスト」で、次の「七つのレベルの思考」を垂直統合できる知性なのだとか。
1)明確な「ビジョン」
2)基本的な「戦略」
3)具体的な「戦術」
4)個別の「技術」
5)優れた「人間力」
6)素晴らしい「志」
7)深い「思想」
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 スーパージェネラリストは、経営者としても優れた才能を発揮してくれそうに感じます。
 ……でも、こんな力を持つ人を育てる(自ら育つ)には、いったいどうしたら? と途方に暮れそうになりますが、この本にはなんと、育て方へのヒントも書いてあるのです。
 例えば「思想」レベルについては、弁証法や複雑系思想。人間力を磨くためには、内観や技術力を磨くなど。
 その他にも「「戦略」とは「戦い」を「略(はぶ)く」こと=無用の戦いをせずに目的を達成することに価値を置く」、「現在求められているのは、山登りの戦略思考(地図を見て計画・実行)ではなく、波乗りの戦略思考(刻々変化するものに柔軟に対応する)」など、ハッとさせられるような文章にたくさん出会うことができました。
「スーパージェネラリスト」……現在の世の中に、確かに必要な人材だとは思いますが、育成するのは非常に難しい上に、時間がかかりそうな気がします。そして一番問題なのは、こういう人材を育成する方法が確立していないことかも。そもそも、これを教えられる(自ら手本になれる)人材が、どれくらいいるのでしょうか。いたとしても、各方面からいつも引っ張りだこで、現場で働き詰めになっているのかも……。
 おそらくスーパージェネラリストの育成法は、「万能の天才」を目指すのではなく、あくまでも「専門家のまとめ役となって問題を解決する人材」を目指すのが現実的でしょう。本人には深い専門的知識は必要ではなく、必要なのは、幅広い分野の概要知識と知的好奇心なのだと思います。そうでないと、大切な人材が燃えつきてしまう危険性を感じます……。
 でもスーパージェネラリストは確かに現在最も必要とされる人材だし、今後AIなどの活躍が予想される未来で、人間に期待される役割を担う有望な「職業」の一つだと思います。
 えーと……ということでみなさん、「スーパージェネラリスト」を目指しましょう。7つの能力全部を身に付けることができなくても、どれか1つだけでも、自分自身にも周囲にも良い影響があると思います。
 最後に、本書の終わりごろにあって、とても心に残った「ガンジーの言葉」を紹介させていただきます。
「あなたがこの世で見たいと願う変化に
 あなた自身が、なりなさい」
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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