『図解 身近にあふれる「化学」が3時間でわかる本 (アスカビジネス)』2020/5/12
齋藤 勝裕 (著)

 私たちは物質に囲まれて生活しています。私たちの周囲には空気が存在し、水を使わない日はありません。体は衣服で包まれ、目の前には木製の机、その上にはプラスチックで包まれたパソコン、手を伸ばせば木と黒鉛でできた鉛筆があります。そして物質は変化します。液体の水は冷やせば固体の氷になり、温めれば気体の水蒸気になります。包丁は錆びますし、ガスコンロではガスが燃えて、赤く輝いて熱くなります……このように物質は変化します。それは化学反応の結果です。……私たちの身のまわりにある物質とその変化を楽しく、わかりやすく解説してくれる本です。
 最初の話題は「01 防水スプレーはどうして危険なの?」。
 え? 防水スプレーって危険だったの?
 実は、危険だったようです。防水(撥水)スプレーの成分は、フッ素樹脂やシリコン樹脂と、溶剤のメチルエチルケトン、酢酸エチル、アルコールなどだそうです。
「スプレーしたガスを吸い込むと、成分の樹脂が肺細胞に付着します。すると、酸素が肺細胞の中にある酸素運搬物質ヘモグロビンに接することができなくなり、酸素運搬ができなくなります。(中略)重い場合には呼吸困難、意識障害、視力障害、言語障害といった症状が現れます。一刻も早い病院搬送が必要となります。」
 えええ! 大量に吸ってしまうと、そんな危険なものだったんだ。やっぱり使用説明書はちゃんと読まなくちゃいけませんね(汗)。
 この他にも、重曹とクエン酸を混ぜたものを保管しようとするのは危険(重曹にクエン酸をまぜて発泡させて使うというのは掃除の常套手段だが、使いやすいように作り置きしておこう、などと思ってガラス瓶に両者を入れて蓋をしておくと、爆発してガラスが飛び散る危険性がある)だとか、つい、うっかりやってしまいそうな身近な危険を教えてくれます。「トイレ用洗剤と漂白剤を混ぜるのも危険(化学反応で塩素ガス(毒ガス)が発生する)」なのだとか。
 また「15 お肉は調理でどう変化する?」には、次の解説がありました。
「肉を加熱するとかたさが徐々に変化します。(中略)60℃までは温度が高くなるにつれて次第にやわらかくなります。しかし60℃を超えると急激にかたくなります。そして、75℃を超えると再びやわらかくなります。こうした肉のかたさの不思議な変化は、筋肉を構成する3種類のタンパク質であるコラーゲン、筋原線維タンパク質、筋形質タンパク質のそれぞれが熱変性する温度が微妙に異なっているからです。」
 ……ふーん。安い肉だから硬くなるのかと思っていたけど、温度のせいもあったのかな……。
 驚いたのが、「21 毒性をもつ金属にはどんなものがある?」の鉛の毒性の話。
「ベートーベンの時代にはワインに白粉(炭酸鉛)を振って飲むのが習慣でした。ベートーベンはことのほかにこれが好きで、そのため晩年聾に苦しんだのです。」
 えええ……その当時は普通にワインに混ぜていたもののせいで難聴になっていたなんて……もしかしたら私たちの時代でも、同じように、体には良くなかったことが後世になって判明するような習慣があるのかもしれませんね。怖いな……。
 この他にも以下のような興味深い記事がいっぱいありました。
「水を入れて作ったコンクリートが固まるのは、この水が蒸発したからだと思っている方も見えるようですが、間違いです。コンクリートから水が抜けたら、元のセメントと砂、砂利に戻るだけです。コンクリートが固まるのは、水とセメントによる化学反応のおかげなのです。セメントと水をまぜると、両者は激しく化学反応して発熱します。(中略)この反応によってセメント水和物とよばれるものができます。セメント水和物はコンクリートの中で砂や砂利を結びつける接着剤のような役割を果たし、強固なコンクリートを生成するはたらきをしています。」
「植物が緑色なのは、葉や茎の細胞の中に葉緑体という緑色の細胞小器官をもっているからです。葉緑体の中には葉緑素とよばれる分子が入っており、これが光合成をおこなう中心分子です。
 哺乳類の赤血球の中には酸素や運搬物質であるヘモグロビンが入っており、ヘモグロビンにはヘムという分子が組みこまれています。クロロフィルとヘムはそっくりな関係です。違いは分子の中心にある金属原子です。クロロフィルに入っているのはマグネシウムですが、ヘムに入っているのは鉄です。」
「「正常プリオン」と「異常プリオン」を比較すると、平面構造、つまりアミノ酸の個数、種類、その並び順に違いは一切ないことが明らかになりました。しかし、異常プリオンでは、その畳まれ方、つまり立体構造が狂っているのです。」
 ……知っておくと役に立つかもしれない「身近にあふれるものの「化学」知識」。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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