『ダム大百科 国土を造る巨大構造物を見る・知る・楽しむ!』2020/6/1
萩原 雅紀 (監修)
台風や豪雨で俄然注目を浴びている巨大ダム。そんなダムの役割と魅力を総合的に紹介してくれる、文字通りの『ダム大百科』で、内容は次の通りです☆
■ダムを知る
スペック別 日本のダムBEST 10
ダムの基礎知識
ダムは誰のもの?/ダムの役割/ダムの構造/ダムの放流設備
ダム管理と河川整備
[ダムの仕事]洪水調節/低水管理
資料館で学ぶダムの役割
一目瞭然! DamMaps
造ってみよう! どこでもダム
ダムの建設工程を見る
■ダムを楽しむ
ダムの放流イベント・見学ツアーに行こう!
ダム見学・観光の楽しみ方
ダムの達人・ダムマイスターになるには?
かっこいいものを、かっこよく。ダムを撮る(星野夕陽)
ダムに行ったらダムカレー (宮島咲)
つい欲しくなる、集めたくなる!? ダムカードの魅力
ダム紙幣&ダム切手(高根たかね)
ほしい!! 作りたい!? 作ってほしい! ダムグッズ
■ダムをもっと知る
ダムと橋
切っても切れぬその関係!? ダムに眠る廃道&廃線~湖底とその周辺~(平沼義之)
ダムが生んだ道路&鉄道(平沼義之)
ダムによる鉄道・道路の付け替え
天端の道路は踏切の仲間!? (平沼義之)
トンネル内分岐の怪しい魅力(平沼義之)
地図に見るダムの…アレレ?
SPECIAL INTERVIEW 津軽ダム作業所所長・鈴木篤さん
行きたくても行けないダム
民間企業のダム
役目を終えたダム
改造されるダム
計画で消えた幻のダム
世界にある巨大ダム
ダム建設における反対運動の勃発
ダム建設の歴史
ダム人物伝
ダムで起きた決壊事故
ダムを題材にした映画・文芸作品
ダム・河川を識る
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ダムの構造などの基礎知識から、ダムの造り方、ダムの楽しみ方(ダムカード、ダムカレー、他)、ダム建設の歴史や反対運動、ダムを題材にした映画・文芸作品など、ダムに関する総合的な話が驚くほどの広範囲さで掲載されています。ダムの切手や紙幣まであることを初めて知りました(笑)。
中でも参考になったのが、「ダムの建設工程を見る」。ダムの建設には、長い時間がかかるのですね。
「一般的には、計画・立案から地質調査、住民説明などに5~10年、川を迂回させたり、資材を運搬する道路を造るのに約10年、資材を確保し、現場で働くための設備を造り、山や川を掘削・整備する作業に5~10年と、周辺環境によっても変わってくるが、ダム本体を建設する前だけで、20~30年を要する場合が多い。こうして、ようやくダム本体の建設になるわけだが、着工から竣工、稼働するまでに5~10年。ダムの大きさにもよるが、すべての工程を入れると、実に30~50年もかかる計算となる。」
実は八ッ場ダムが建設中だったころ、「建設中のダム見学」をしたことがあり、まさに「ダムの建設工程を見る」ことが出来たのです。ダムの周辺には、巨大工場(骨材製造設備など)や採石場のような場所もあって壮観でした☆ なかでもダム専用のコンクリート工場の存在は、ダムの建設に膨大なコンクリートが必要になることを実感させてくれました。この本によると、ダム建設現場の周辺で採取された岩石は、一次破砕設備でさらに破砕され、骨材になっていくのですが、実際にコンクリートになる前に洗浄されるようです。
「サージパイルから運ばれてきた原骨材は、まず、ドラムスクラバという骨材専用の洗濯機で、泥や粘土を洗い流す。」
ダムのコンクリートは堅牢でなくてはならないので、泥などの余分なものを洗い落とした骨材を使っていたんですね。
この他にも、役目を終えたダムが新しいダムの湖底に沈んでいることもあるなど、興味深いことをたくさん知ることが出来ました。
史上初めてのダムは、紀元前2750年ごろのエジプト王朝のサド・エル・カファラダムだそうで、これはピラミッド建設労働者の飲料水を確保するために造られたのだとか。そんな古代からダムがあったんですね!
ダムというと環境破壊のシンボルのように言われることもありますが、巨大土木建築として単純に「凄い!」と思ってしまいますし、ダム湖周辺の景色も美しいと思います。そして車で簡単にダム観光が出来るのも、ダム建設のために造られた道があるからなんですよね……。
ダムのことを詳しく知ることが出来る『ダム大百科』でした。欲を言うと、興味を持った人が身近なダムを見に行けるように、全国の主要なダムの一覧(住所つき)があると良かったな、と思ってしまいました。それでも、気軽に読める単行本サイズで、ここまで多角的にダムの情報をまとめてある本は、とても貴重だと思います。ぜひ読んでみてください☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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