『1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』2019/11/14
エリック・シュミット (著), ジョナサン・ローゼンバーグ (著), & 2 その他

 アメフトのコーチ出身でありながら、優秀なプロ経営者。たった一人で、シリコンバレー中の企業に空前の成功をもたらした伝説のリーダー、ビル・キャンベルの教え(コーチの方法)を明らかにしてくれる本です。
 アップルのジョブズさんやアマゾンのベゾスさんのような巨大な成長IT企業の有名(有能)な経営者に、「コーチ」なんて必要だったの? という気もしますが、経営者は困難な決断を次々と要求されるので、やっぱり「コーチ」は有用なのでしょう。
「すぐれたマネジャーでいるためには、すぐれたコーチでいる必要がある。人は高みに上れば上るほど、自分が成功するために他人を成功させることがますます必要になる――そしてそれを助けるのが、コーチなのだ。」
「コーチは私たちのポテンシャルをただ信じるだけでなく、さらに一歩踏み込み、私たちがポテンシャルを実現できるように助けてくれる。私たちに自分の盲点が見えるように鏡にかざし、弱みに正面から向き合えるようにしてくれる。私たちがよりよい人間になれるよう手を貸してくれるが、私たちの功績を自分の手柄にはしない。」
「ほどよい緊張を保ちつつ、チームをコミュニティに育て上げるには、コーチが欠かせない。つまり、個人だけでなくチーム全体と仕事をし、たえまない緊張を和らげ、共通のビジョンや目標と調和するコミュニティを育み続ける存在だ。」
 そして「3 「信頼」の非凡な影響力」には、次のような記述がありました。
「コーチャブルな素質とは、正直さと謙虚さ、あきらめず努力を厭わない姿勢、つねに学ぼうとする意欲である。」
「相手に全神経を集中させ、じっくり耳を傾け、相手が言いそうなことを先回りして考えず、質問を通して問題の核心に迫れ。」
 ……誰かに相談されたとき、話を聞きながら、つい(この問題をどうやって解決するか)について先回りして考えてしまいがちでしたが(汗)、こういう態度はマネジャーやコーチとしては良くないんですね……反省させられました。
「何をするかを指図するな、なぜそれをやるべきかという物語を語れ。(中略)人は物語を理解すれば、それを自分の身に置き換えて考え、何をすべきかを悟る。心から納得させるんだ。」
 ……指図せず、「物語」を語ることで、自分自身で何をすべきかを考えさせる……これは人を成長させる最高のコツのように感じました。
 そして、この本で最も参考になったのは、「4 チーム・ファースト」。
「メンバー全員がチームに忠実で、必要とあらば個人よりチームの目的を優先させなければ、チームの成功はおぼつかない。チームを勝たせることが最優先事項でなくてはならない。」
 ビルさんはミーティングに出たとき、全員の様子を観察していたそうです。
「ビルがミーティングに出ていたらどうしたか? まず耳を傾け、目をこらしたはずだ。これが一般的なコーチの力、すなわち「試合に出ない」からこそ持てる、異なる視点を提供する能力だ(パトリック・ピシェットいわく、「ビルはいつもチェスのすべての駒を目に入れていた。彼自身が『盤上』に乗らない余裕があるからだ」)。ビルはエリックの毎週のスタッフミーティングに参加し、熱心に耳を傾け、参加者のボディランゲージを観察し、雰囲気の変化を察していた。」
 そして「人々のあいだの「小さなすきま」を埋める」努力を欠かさなかったのだとか。コーチというと、個人の成長を促すためにあるような気がしていましたが、チームを導くことはそれ以上に重要なようです。
「メンバーのことを知り、気にかけると、チームを導くことはずっと楽しくなり、チームは実力を遺憾なく発揮できる。」
 チームのメンバーがお互いに親近感を持っていれば、仕事をする上で精神的にも楽だし、実力を発揮しやすくなりそうな気がします。なにより「楽しく仕事」が出来るのは、社員の人生をよりよくするのに役に立つだけでなく、会社にとっても望ましい状態なのではないでしょうか。
 経営者やマネジャー、そしてチームのためのコーチ……こういう人材は本当に貴重だなと思います。身近にもそんなコーチが欲しいと感じた方は、ぜひ読んでみてください。何かヒントとなるものを見つけられるかもしれません。
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