『感染症大全 病理医だけが知っているウイルス・細菌・寄生虫のはなし』2020/4/23
堤 寛 (著)
日常に潜むウイルス、細菌、寄生虫から新型コロナウイルスまで、感染症を専門とする病理医の堤さんが紹介してくれる感染病理学の本『感染症大全』で、内容は次の通りです。
第1部 病理医がのぞいた感染症の世界
第1章 ヒトvs感染症の歴史秘話
第2章 病原体・感染症Q&A
第2部 病理標本が語る感染症ストーリー
第3章 日常に潜むウイルス、細菌、カビの巻
第4章 寄生虫症の恐怖の巻
第5章 驚きの性感染症の巻
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病理医というのは、病理標本をもとに診断する専門医師だそうです。
「病院やクリニックの病理診断科には、ほぼすべての臨床科から「検体(人体から採取された血液、髄液、尿、組織の一部や排泄物など)」が送られてきます。その検体からつくられる病理標本を顕微鏡でみて、診断をくだすのが病理医です。病理医は、さまざまな病気に対して幅広い知識をもっている病気の専門家ともいえる医師なのです。」
第1章は、感染症への取り組みのさまざまなエピソード(歴史)。第2章は、病原体・感染症についてのQ&A。そして第3~5章では、さまざまな感染症(病気)の症例を総合的に紹介してくれます。
「第3章 日常に潜むウイルス・細菌・カビの巻」では、インフルエンザ、日本紅斑熱、サルモネラ、レジオネラ、人喰いバクテリア、ガス壊疽菌、ジフテリア菌、髄膜炎菌、結核菌、MRSA、白癬(ミズムシ)菌……など。
「第4章 寄生虫症の恐怖の巻」では、アニサキス、回虫、蟯虫、糞線虫、広東住血線虫、イヌフィラリア、横川吸虫、ビルハルツ住血吸虫、宮崎肺吸虫、サナダムシ、エキノコックス、ニキビダニ、アタマジラミ、ウジ虫……など。
そして最後の「第5章 驚きの性感染症の巻」では、ガードナー菌、カンジダ、膣トリコモナス、歯肉アメーバ、淋菌、クラジミア、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、梅毒、ケジラミ、HIVウイルス、赤痢アメーバ……などの症例を知ることが出来ます。
第3~5章は、各症例とも最初のページに、菌などの写真と、名前・感染場所・大きさ・病名・症状・殺傷能力・予防法が簡潔に記載されています。
感染症について、いろんなことを知ることができました。例えば、インフルエンザのとき、お子さんに解熱剤を飲ませるのはやめたほうがいいようです。
「インフルエンザ脳症はインフルエンザの発熱に対して解熱剤(非ステロイド系消炎鎮痛剤)を使ったときに生じることをぜひ知っておいてほしい。解熱剤には、アスピリン、ジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)、メフェナム酸(商品名:ポンタール)やインドメタシンがあげられる。」……これ、病気になったときに、焦ってやってしまいそうなので、気をつけたいと思わされました。
また「うわ……」と怖くなってしまったのが、マダニによる日本紅斑熱の話。
「西南日本における日本紅斑熱の発生地域は、とてもユニークな分布を示す。流行地は伊勢神宮(三重県)、熊野古道(三重県~和歌山県)、出雲大社(島根県)、四国お遍路の南部地域、天草、上五島などである。つまり、昔のままの森が残る、最近ではパワースポットとして注目を浴びる地域に、この日本固有のリケッチア症が多発するのだ。「神さまの病気」ともいえそうだ。人の手が入らない森や野山に住むシカやイノシシを吸血するキチマダニなど数種の幼虫がこの熱病を媒介する。日本紅斑熱という病気は、人とシカがともに感染する「人獣共通感染症」の代表でもある。森や野山に入るときは、くれぐれもマダニに注意しよう!」
……熊野古道、素敵な森林浴になりそうだから、機会があったら、ぜひ歩いてみたいと思っていたのに……パワースポットでマダニに気をつけなければいけないなんて……行かないほうがいいのかも……(涙)。
そして、もっと怖くなったのが、宮崎肺吸虫の症例。なんとレストランで刺身の飾りを食べたことで感染してしまったのだとか!
「患者の男性は、横浜の本格的な中華料理店で、舟に乗った豪華な刺身を提供された。刺身を囲むようにサワガニが飾られていた(本格中華料理でよくみかける習慣らしい)。本来、サワガニは飾りであって、食べることを前提にしていない。しかし、彼は深酔いした状態で、生のサワガニを分別なくいただいてしまった。それを目撃した仲間がそう証言し、感染の原因がサワガニだったことが判明したのである。」
日本の高級レストランでは、食べないことが暗黙の約束になっている「飾り」がお皿に載っていることが多いですが、意外に危ない習慣だったんだなーと怖くなってしまいました。最近は外国人のお客様も多いようですが、気づかずに食べてしまうことって絶対にあると思います。食材を「飾り」に使う場合は、「食べても安全」なものに限定して欲しいと思います……。
こんな感じで、いろんな感染症について学ぶことが出来ました。読んでいるうちに、なんだか体が痒くなってきたり、手を洗いたくなってきたりしましたが……感染症を予防するためにも、ぜひ一度、読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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