『世界で一番やさしい建築設備 最新改訂版 (107のキーワードで学ぶ)』2020/2/2
山田浩幸 (著, 監修), 檀上新 (著), 壇上千恵子 (著), 佐藤千恵 (著), & 1 その他
給排水・空調・電気の基本や、省エネ・メンテナンスなどを建築設備全般について総合的に解説してくれる本で、内容は次の通りです。
Part1 設備計画を始める前に
Part2 給排水・給湯のキホン
Part3 換気・空調のキホン
Part4 電気・通信のキホン
Part5 オフィス・その他施設
Part6 省エネ設計に挑戦
Part7 設備図と関連資料
「Part1 設備計画を始める前に」では、戸建住宅の概要と主な建設設備、集合住宅の概要と主な建設設備、現地調査のチェックポイントなどがあり、「Part2~5」では、部分(機能)ごとの解説があります。配管や配線のことだけでなく、メンテナンスについても簡単に記載されていて、参考になりました。例えば「排水槽の設置」という項目では、メンテナンス・更新として「排水の滞留時間はおおむね2時間以内、清掃頻度は4か月に1回以上、定期点検は月に1回以上と定められている」とありました。そんなふうに、きちんと決められていたんですね。
また「Part3 換気・空調のキホン」では、知らなかった冷暖房システム「放射冷暖房」を見ることができました。これは「熱源でつくった冷温水をラジエータのなかに送水して、冷暖房を行う。暖房時は体温程度の中温水、冷房時は冷水を循環させ、放射によって空間全体に安定した温熱環境をつくり出す。」もので、室内に大きなパネルを複数設置するという大掛かりな装置のようです。空調機からの送風による空気対流がないので、室内の温度分布が均一になる上に、送風音もなく静かで、さらに省エネにもなるという素晴らしい冷暖房装置のようでした。ただし24時間連続運転が前提なので、自宅で仕事をしている人などに向くように思います。空調の風が苦手な高齢者の方にもいいかもしれません。もっとも、こまめな清掃が必要らしいし、故障したとき修理が大変そうな気がするので、実際に自分が導入するならば、もっと普及してからにしたいとは思いましたが……(汗)。
その他、「コンセント設置数の目安」とか「防犯設備」とか「宅内LANの構築」とか参考になる情報がいっぱい。
「Part7 設備図と関連資料」も、配管・配線の種類別一覧表とか、設備設計図、電灯図、コンセント図、弱電図、衛生設備図、空調図、換気図など、配線・配管がよく分かる種類別の設計図の具体例が掲載されていて、すごく参考になりました。
そして最後の「全体計画チェックシート」や「要望調査チェックシート」は、設計前の確認項目や建築主の要望を聞くためのですが、家を建てたいと考えている一般の人にとっても、建築家などに依頼する前に自分の希望をまとめておくために、とても役に立つように感じました。
建築設備のことを総合的に知ることが出来る本でした。
一般人としては、「キッチン設備」や「浴室設備」「洗面台」など、よく使う住宅設備の具体例がもっと欲しかったなーと感じなくもなかったのですが、この本は、それ以前の「建築設備」全体の概要を広く浅く知っておくために、とても役に立ちそうです。この本で基礎知識を得た上で、実際のキッチン設備などは、ネットで最新のカタログ情報をじっくり読む方が現実的なのでしょう。
一般人向けというよりは、建築関係の仕事をしている人向けの本ですが、これから家を建てようと考えている人にも役に立ちそうに思いました。読んでみてください。
なお、私が実際に読んだのは、2013年発行の本でしたが、この本には2020年発行のより新しい版がありますので、ここでは新しい版の方を紹介させていただきます。
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社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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