『図解入門 よくわかる 最新「橋」の科学と技術 (How-nual図解入門Visual Guide Book) 』2019/6/22
五十畑弘 (著)

 私たちの暮らしを支える「橋」の歴史と役割、そして技術と構造の基礎を、豊富な図表で分かりやすく解説してくれる入門書で、2013年刊行『図解入門最新橋の基本と仕組み』に加筆、修正を加えた新版です。内容は次の通りです。
第1章 橋の歴史とその文化
第2章 橋の構造と仕組み
第3章 橋を科学する
第4章 橋のできるまで
第5章 橋を支える技術
第6章 橋のメンテナンス
第7章 歴史的橋梁の保全
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 工作好きにとって、「橋」というのは憧れの建造物の一つ。なぜならジオラマに橋を一つ置くだけで、風景にぐっと変化をつけられるから。だからこの初心者向けの橋の解説書は、興味津々で読みふけってしまいました(笑)。
 そして期待を裏切らない本でした! 橋のかたちや特徴、構造形式、力学的な成り立ち、支承や伸縮装置といった橋の各部の仕組み、設計手順、工場での制作、劣化や損傷によるメンテナンス、橋のデザインが景観に与える影響、さらには文化的、歴史的な側面までを、総合的に解説してくれるのです。「ゲルバー桁」とか、「プレストレスト・コンクリート」とか、「道路橋の伸縮装置」とか、橋の工法上の工夫をいろいろ知ることが出来て、すごく参考になりました。
 すでにBC3000年ごろにはスイスの湖付近に桟橋が架けられていたなど、橋は古代から作られてきましたが、アーチ橋などが建設直後に崩壊してしまうこともあったのだとか。
「石造アーチは支保工を取り外した後、しばらくの間が試練の時です。ヨーロッパでは中世後期以降になって、扁平なアーチが作られるようになると、支保工をはずすと支点に作用する水平力に耐えきれずに崩壊する石造アーチもありました。支点は水平方向に徐々にずれて、これに伴ってアーチの中央部は次第に沈下し、やがて全体の崩壊に至ったものです。(中略)
 岩盤のしっかりした場所に建設された石造アーチは、時間とともに自分の重さでより堅牢さを増します。大きな変状さえなければ多少の基礎の移動に対して、自らの形を少し変えてこれを吸収し、安定を保つことができます。これが、いまなお200年以上経過した古代ローマの石造アーチが現役の橋として利用できる理由の一つです。」
 ……作ったばかりの橋が崩壊するなんて、まさに悪夢ですね(涙)。しかも崩壊した橋が、川を堰き止めて災害を起こしてしまうかもしれないことを思うと……できるだけ速く、落ちた橋を流れる水の中から拾い上げなければならないのですから(涙、涙)。
 こういう多くの失敗を重ねて、現在の橋があるのですね!
「第4章 橋のできるまで」では、橋の設計から製作、架設までの橋の建設技術を概観することが出来ます。設計だけでも、数多くの手順(および調査)があることを知りました。橋が崩落してしまうと、本当に大惨事になってしまうので、このように数多くの手順を踏んで、堅牢なものを作って欲しいと思います。
 最新の橋の科学と技術について、総合的に学べる本でした。土木や建設を学んでいる学生の方はもちろん、工作好きの人にもお勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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