『もっとわかる時間のこと―アインシュタイン・ホーキングの時間論からタイムマシンの可能性まで』1993/1
二間瀬 敏史 (著)

 分かっているようで、実はよく分かっていない「時間」について、とても分かりやすく総合的に解説してくれる本です。内容は次の通りです。
1章 運動すると時間が遅れる!―特殊相対論
2章 光が曲がって進む!―一般相対論
3章 宇宙はどんどん膨張していく―相対論的宇宙論
4章 どうして時間は未来に進む?―時間の矢
5章 タイムマシンは可能か?
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「時間」に興味を抱き始めた初期の頃に買った本(1993年発行)なのですが、「時間」に関する本には哲学的・物理学的な難解な本が多い中で、この本はすごく分かりやすくて感激した記憶があります。
 それにしても……「時間」って、本当に不可解な存在ですね。
 例えば「運動している時間は遅れる」という話。「止まっている光時計」と「動いている光時計」では、動いている光時計の方が遅くなるのだそうです。「光の速さは同じなのだから、外で測る光の往復時間の方が、中で測る往復時間より(動いている長さ分だけ)長くなる」
 また同じように「動いている物差しは縮む」のだそうです。
 これらの解説を読むと、「なるほど」と一応は納得できるのですが、やっぱり、なんか……もやもやしたものも残ってしまいます。でもこの「動いている時計が遅れる」という現象は数多くの実験で検証されているのだとか。その一つが、ミューオンという素粒子の観測。
「(宇宙線のひとつの)このミューオンは、静止した状態では、100万分の1秒という短い時間で壊れてしまい、他の粒子になってしまいます。(中略)数10km上層でできたミューオンが地上にまで届くはずがありません。ところがそのミューオンが地上で観測されているのです。これはミューオンが、光速度近くの速度で運動しているために、地上の我々から見ると寿命が大きく伸びたためです。」
 光速度近くの速度で運動しているものは寿命が伸びる……なんか不思議ですね……もっとも、これが「時間の遅れの実証」になるのは、ミューオンが地上で出来ることが「絶対にない」ことが明らかになった場合に限るような気もしますが……本当に絶対にないんでしょうか?
 ところで「光速」は「いつも一定」なのだと思っていましたが、重力で遅くなることがあるそうです。「落下するエレベーターの上下に開いた穴の下から上に向かって動く光の速度を、外から観測すると、光の速度はエレベーターの落下速度分遅くなる」のだそうです。重力は光の速度を遅らせる……「波長の長い光ほどその色は赤くなるので、重力の強いところから出てきた光の色は赤く、そして暗くなるのです。」……ふーん、そうなんだ。
 そして、とても興味深かったのが「5章 タイムマシンは可能か?」の「ワームホール」の話。タイムマシンをつくるのに、ワームホールを使う方法があることは知っていたし、ワームホールは二つのブラックホールをつなげたようなものだということも知っていたのですが、「ブラックホール二つをつないだもの」はタイムマシンには出来ないのだそうです。というのも、ブラックホールの内部には「特異点」がありますし、たとえ特異点を避けてつないだとしても、ブラックホール表面が時空の地平面なので、いったん入ったら二度と外に出られないからです。だからタイムマシンに使うワームホールは、「入口に事象の地平面ができないように、ゆるく時空を曲げ」て、「特異点を避けてつなぐ」という、ものすごく高い難易度が必要なのでした……実現可能なようにはとても思えない……。
 その他、「宇宙ひも(エネルギーの塊)」を使う方法もあるようですが、「宇宙ひも」なんて本当にあるのでしょうか? ……やっぱり「タイムマシン」作りは途方もなく困難なようです。まあ、因果律を壊す可能性のある危険なものなので、簡単に作られるのも困りものですが(笑)。
 面白くて、とても勉強になる本でした。「時間」に興味のある方はぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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