『あたらしい人工知能の教科書 プロダクト/サービス開発に必要な基礎知識』2016/12/17
多田 智史 (著), 石井 一夫 (監修)

 人工知能(AI)を利用した開発に必要な基礎知識の概要を総合的に紹介してくれる本で、内容は次の通りです。
CHAPTER 01 人工知能の過去と現在と未来
CHAPTER 02 ルールにルールを重ねる
CHAPTER 03 生きているかのように振舞う
CHAPTER 04 最適解と重み付け
CHAPTER 05 最適化と重み付け
CHAPTER 06 統計的機械学習
CHAPTER 07 教師なし学習と教師あり学習
CHAPTER 08 自律知能エージェント
CHAPTER 09 深層学習
CHAPTER 10 パターン認識
CHAPTER 11 テキスト・自然言語処理
CHAPTER 12 知識表現と構造
CHAPTER 13 分散コンピューティング
CHAPTER 14 大規模データ・IoTとのかかわり
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『あたらしい人工知能の教科書』というタイトルだったので、この本一冊を読むだけで、人工知能の基礎知識を学べる本だと思って読み始めたのですが、各項目の説明があまりにも「概要」過ぎたので、すでに人工知能の詳しい知識を持っている人が復習するのには役に立つけど、初心者の人にとっては不十分な内容なのでは……と少しがっかりしてしまいました。
 それでも読み進めていくうちに、「項目がものすごく多岐にわたっている」ことに気づき、あ、この本が一冊あると人工知能を学ぶ(仕事をする)ために、どんな知識が必要かとか、人工知能にはどんな種類のものがあるかとか、「とっかかり」部分を総合的に知ることが出来るんだ!と感じました。
 実は人工知能を学ぶ(仕事をする)ためには、知っている方がいい前提知識がかなりあります。例えば最近流行りの機械学習には、大学レベルの数学の知識が不可欠ですし、コンピュータに関する知識も必要です。
 この本は、特に「数学(統計学)」部分が充実しているように感じました(ただしこの統計部分も「概要知識」なので、じっくり学ぶためには、さらに別の本を読む必要があると思いますが……)。
 またコンピュータ知識としては、特にデータベースの知識が必要だとか、言語はPythonを覚えておくといいとか、具体的に知ることが出来ます。
 だからこの本は、この本一冊で人工知能を理解できるようになるというよりは、人工知能を学ぶ(仕事する)ために必要な基礎知識の名前と概要を知ることが出来るカタログ本としてすごく有用だと思います(最後にちゃんと索引もあります)。
 最後の「CHAPTER 14 大規模データ・IoTとのかかわり」には、人工知能研究の最新動向も紹介されていて、特に「小脳のモデリング」が興味津々でしたので、以下に紹介させていただきます。
「人間の小脳は大きさこそ脳のうち10%程度であるものの、神経細胞の数は80%になると言われています。それらは複雑な神経回路を構成しているわけではなく、文脈信号と教師信号と呼ばれる2つの入力と1つの出力を持ちます。文脈信号は橋核から苔状繊維を通して顆粒細胞と小脳核へ興奮性の刺激として伝わり、教師信号は下オリーブ核から登上繊維を通りプルキンエ細胞へと投射しており、非常に強い興奮性の入力を与えます。その後、小脳核から出力が起こります。このような構成のネットワークを計算機上でシミュレーションを行い、実際の動物で起こる眼球運動を再現できたとされています。
(中略)1秒間の小脳の神経細胞が1秒以内でシミュレートできるとされており、リアルタイムな挙動を見ることができます。将来的には、小脳の機能に障害が起こったことなどにより運動が不自由になった場合に代替する機能をこのような人工神経回路装置が担うこともあるでしょう。」
 人工知能の研究が、こんな風に人間の医療分野に活用できたり、「人体」について深く知るために役に立ったりするのは、とても素晴らしいことですね。
 今後ますます利用が広がっていくと思われる期待の成長分野「人工知能」に携わるために、何を学ぶべきかの端緒を総合的に紹介(解説)してくれる本だと思います。人工知能に興味のある方は、ぜひ一度、目を通してみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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