『惑星探査入門 はやぶさ2にいたる道、そしてその先へ』2014/12/10
寺薗淳也 (著)

 日本の宇宙研究の最先端で働いてきた寺薗さんが、月や惑星探査について総合的に解説してくれる本です。惑星探査だけでなく、世界の宇宙開発の歴史から、現状、そして今後のあり方まで、具体的な例をあげて総合的に分かりやすく紹介してくれます。
 惑星探査というとすぐ思い浮かぶのが、2010年に感動的な帰還をとげた「はやぶさ」。すっかり失敗プロジェクトだと思っていた(汗)のに、紆余曲折を経て、きちんと帰ってきたのを見て、人間の知恵の力って凄い☆ くじけない力って尊い☆ とすごく嬉しくなりました。
 そして「かぐや」が見せてくれたハイビジョンカメラの美しい映像、なかでも「地球の出」の美しさには感動させられました。「かぐや」はその他にも、地形カメラで月面の詳細な姿を明らかにし、裏面を含め、月全体の詳しい重力データや高度データを教えてくれるなど、輝かしい成果を残しました。月に縦穴があることも発見したそうで、その中に月面基地が作れるのではないかと期待されているそうです。月の場合、基地を地下に作った方が、有害な宇宙線や隕石から人間を守れるので、地上に作るより良いのだとか。
「はやぶさ」の感動的な帰還を受け、「はやぶさ2」が一気に事業化へ動きだしました。「はやぶさ2」は、小惑星を探ることで、太陽系のでき方、さらには我々の地球、さらにはその上で誕生した生命の起源へつながるストーリーを明らかにする(!)という壮大な目標があるそうです。小惑星は「太陽系の化石」、すなわち太陽系ができた頃の痕跡をとどめているからだそうです。
 ところで「はやぶさ2」が目指す「小惑星」というのは、てっきり小惑星帯にあるものだと思って「すごく遠くまで行くんだな」と勝手に考えていたのですが、そうではなくて、目指しているのは「地球近傍小惑星」なのだそうです(汗)。地球近傍小惑星とは、地球の軌道に似た軌道をとって太陽の周りを回っている小惑星で、うまく軌道を選んでやれば地球からアクセスしやすい小惑星なのだそうで……いろいろ勉強になりました☆
 そしてこの本を読んで一番驚いたのは、宇宙開発をリードしているアメリカのNASAが2013年4月に発表した「小惑星イニシアチブ」計画。この計画は2つの柱からなっているそうで、1つは、小惑星を無人探査機で捕獲し、地球近くまで牽引、そこに宇宙飛行士が探査しに行くという、SFさながらの「小惑星捕獲探査計画」。もう1つは、地球に近づく小惑星を監視し、将来的には軌道離脱なども考慮するという「小惑星グランドチャレンジ」。……なんか映画みたいで、わくわくしますね☆
 人類が宇宙空間に物体を飛ばすようになって、まもなく60年になります。この本を読んで、この60年の惑星探査や宇宙開発に関する各国の取り組みの概要や、日本の状況なども知ること出来て、とても興味深かったです☆
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