『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年』2019/2/18
Matt Wilkinson (原著), マット ウィルキンソン (著), 神奈川 夏子 (翻訳)

 脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか……這い、泳ぎ、歩き、飛ぶため、動物はどう形を変えてきたか、その最新研究を紹介してくれる本です。
 生物は偶然による突然変異によって姿形を変え、偶然にもたらされた周囲の環境に適応したものだけが生き残る……変異も適応も、偶然に支配されているとすれば、形態の進化には法則性は存在しないのでしょうか? そんなことはない、とウィルキンソンさんは言います。
「生物は効率的に移動運動をしなくてはならない。そのためには、ほかならぬ物理法則に適応できるかどうかが重要だ。物理法則はすべての環境に等しく存在し、生物の移動運動の進化、ならびに、その移動運動を可能にする生物の形状に、非常に強い制限を与える。現在の生物たちの形態は、移動運動を司る物理法則と、形態変化を司る進化の法則があやなす40億年の物語のすえ、できあがった。そこには「法則性」や「因果関係」も見出しうる。」
 この本は、「移動運動」をテーマに生物の進化を考察しています。「移動運動」をテーマにすると、移動運動を司る物理法則と、形態変化を司る進化の法則によって、40億年の生物進化の経緯を、より科学的に明らかにすることが出来るように感じました。
「動物界の黎明期、最古の這うようなアメーバ運動から繊毛の誕生へ、そして繊毛にとって代わって神経系が登場したことを思い出そう。次に、細胞骨格の再編成が内部で行われて筋肉が形成された。筋肉は最初は移動運動の舵取りのような役割を果たしていたが、次第に推進力を担い始める。このような発達と並行して、放射相称性の身体構造が破たんし、繰り返しのモジュールが1次軸の周囲ではなく1次軸、つまり前後軸に沿って発達した。(中略)カンブリア爆発は動物門のさまざまな祖先がそれぞれの体制を発達させた時期であるが、わたしたちの属する脊索動物門の起源は、脊索の誕生と水中での推進力を生むうねり運動の出現による。これらの特徴はのちに、脊柱と対になったひれの発達に取って代わられる。数百万年後、最初の空気呼吸が始まったときから、さまざまな出来事が展開していく。脊柱とひれの骨格の骨化、ひれの水底歩行への適応化、そして陸上への移動、わたしたち人類に連なる系列にかんしては、四つ足での歩行や走行のエネルギー効率は次第に改善され、腹部を地面につけた姿勢から、地面から垂直に浮いた姿勢に変わった。そして樹上での生活が始まる。もっとも近い霊長類の祖先は不安定な枝に生る果実をとって食べるのを好んだため、拇指は対向して生え、足の指は大きく発達した。(中略)走れるようになった人間は獲物を襲撃することにかつてないほどの力を発揮し、これが脳の拡大を仕上げたとされる。そして拡大といえば、それに続いて人類は地球上のあらゆる場所にその勢力範囲を拡大していった。」
 ……動物は、効率的移動のため「物理法則」に適応して形を進化させなければならなかった、という観点で、40億年の生物の進化の歴史を分かりやすく紹介してくれる本です。物理学や生物学などの専門的な知識も含まれていて、完全に理解できたわけではありませんでしたが(汗)、科学的な説明で説得力があり、とても興味深く読むことが出来ました。進化に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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