『夜のフロスト』2001/6/8
R・D・ウィングフィールド (著), 芹澤 恵 (翻訳)

 流感が猛威をふるうデントンに中傷の手紙がばらまかれ、連続切り裂き犯が老女を襲う。絶体絶命の人手不足の中、ウイルスにも見放されたフロスト警部に打つ手はあるのか?……シリーズ既刊の『クリスマスのフロスト』、『フロスト日和』が両方ともミステリ・ベスト10第1位に選ばれた大人気シリーズ、お待ちかねの第3弾です☆
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
 今回、フロスト警部とコンビを組まされるのは、若手の新任部長刑事ギルモア氏……って、おおい、クライブ君とウェブスター君はどうなったのー? また一言もなしかよ……(涙)。
 しかも今回も鬼畜な小説家によって、フロスト警部は不眠不休の大活躍をさせられています(涙、涙)。まあ、今回は「流感で警察署のみんなが次々に倒れていく」からしょうがないのですが……って、この設定がそもそも鬼畜なんだよ!
 猛威をふるうインフルエンザもなんのその、フロスト警部は元気に下品なジョークをかましつつ、新任部長刑事を連れて夜の町を駆け回ります。圧倒的な人手不足の中でも、「事件は待ってくれない」。面倒な事件が次々に起こり、これでもかと怒涛の勢いでデントン警察署に襲い掛かってくるのです。……ああ……。
 いつも通り、読むのも辛くなってくる酷使っぷりなのですが、解決できない大きな謎を残しつつ、小さい謎の方はフロスト警部の名(迷?)推理でどんどん解決していくので、そのわくわく感で展開から目が離せなくなります。……これも「いつも通り」じゃねーか! ちくしょう、分かったよ、ウィングフィールドさん、あんたが見事な手際だってことは認めるよ!
 捜査にかけられる人手や時間が圧倒的に足りないなか、フロスト警部の「直感」が冴えわたります。でもこの「直感」、私にもありました(ドヤ顔)。犯人や被害者の立場に立って現実的に考えてみる・ちょっとした違和感を大事にする、と、誰が(どんな人物が)犯人なのか、分かってしまうものです(ふふっ)。……と思いきや、連続切り裂き犯に誤認逮捕疑惑が……ええっ、そんな馬鹿な(フロスト警部だけでなく、私の背中にも冷や汗が……)。今回も750ページ越えの長編なのに、この緊迫感、本当に見事な手際過ぎです。
 そして今回、映画みたいなアクションシーンも満載です☆ というか、映画にするとすごく映えるだろうなーというシーンがたくさんあって、最後まで本当にドキドキさせられました。
 さらに、いつものお約束の絶望的な「事務処理の破綻」は、最後に意外な結末を迎えます(笑)。
 今回も、文句なく面白かったです。やっぱり次回作が待ちきれません☆
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