『楽天で学んだ「絶対目標達成」7つの鉄則』2018/1/25
小林 史生 (著)
「スピード」と「目標達成」を企業文化とする楽天で働き、30 代で楽天が買収した赤字の米国企業の社長を任されて見事に再建した小林さんが、現場で実践してきた考え方、行動の仕方、習慣を7つのポイントに絞って紹介してくれる本です。
その7つの鉄則とは、ずばり次の7つ。
第1章 鉄則1 短期間でストレッチして「成功を体験」する
第2章 鉄則2 加速するため「目標達成モメンタム」をつくり出す
第3章 鉄則3 「成長スピードを加速」させる行動法則
第4章 鉄則4 「努力を正当化」することで、最高の結果が出る
第5章 鉄則5 「早く何回も打席に立つ」ことで胆力をつける
第6章 鉄則6 「達成する仕組み」をつくれば距離が縮まる
第7章 鉄則7 メンバー育成のキモは「本気度合」を見せること
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この目次で分かるように、一つ一つの鉄則が章タイトルになっていて、その章でその鉄則の事例などが詳しく説明されています。また目次には、この章タイトルの下に項目タイトルがあり、それをざっと眺めるだけで内容が概観できるようになっています。さすがに「スピード」と「目標達成」を重視する楽天らしい、分かりやすい構成&内容だと感じました。
全体として感じたのは、楽天は日本の会社というよりも、米国流の組織運営を行っている会社なんだなあ、ということ。楽天では「英語」が公用語とされていることは有名ですが、それ以外にも、社員に不可能に近い(?)「高い目標」を「スピード感」を持って達成させていること、昇進・降格人事をかなりダイナミックに行っていること……社員の方は大変なのだろうと思いますが、これこそが、変化が速い現代社会に求められている企業運営の形なのかもしれないと思わされました。
内容は、すごく新奇だというわけではなく、ごく一般的な自己啓発書や仕事術の本に書いてあるものも多かったように思います。だからこそ、むしろ「実践的に使える」鉄則になっているように感じました。
個人的に印象に残ったのは、「第4章 鉄則4 「努力を正当化」することで、最高の結果が出る」の中の、「米国人に楽天社員の顔写真付き名札」をつけてもらった時の苦労話。米国の会社では、そういう名札は一般的ではなかったそうです(「顔写真付き名札」って、海外TVドラマでよく見るもののような気がしていましたが、実は日本の習慣だったんですね。知りませんでした)。小林さんは何度も指導したのですが、無視されることも多かったのだとか。
そんなとき、仕事上の恩師がアドバイスしてくれたそうです。
「小林君、説得と納得の違いはわかりますか?」
「『説得』というのは、無理やりやらされる感じで、相手がハラ落ちしていない状態。(中略)『納得』というのは、相手がハラ落ちして理解している状態。つまり心底それをやったほうがいいと自分自身で思っている状態。」
……なるほど。「他人に指示されて、ただ、やらされている」時よりも、「仕事の目的を理解して、やっている」時の方が、仕事に「やる気が出る」のと似ていますね。私も、誰かに何かを本気でやって欲しい時には、「説得」よりも「納得」してもらうことを心掛けたいと思いました。「納得」には次の効用もあるようです。
「納得と説得の違いによって、何かを徹底するときの管理工数がまったく異なります。また納得のよいところは、相手が納得していると、勝手にさらに良い形に改善してくれるという副作用も期待できる点です。」
この他にも、「人をマネジメントするときは、期待とストレス負荷を同時にかける」とか、「(会議の)取りまとめをすると、そのディスカッションのアジェンダ権を持つことができるでしょ。そうすると自分の意思決定が大きな影響力を持たせられるから。アジェンダ権を持つことがとても重要だよ」など、キラッと光るヒントをたくさん見つけることが出来ました。
「スピードを上げる」「できる方法を考えぬく」行動習慣を教えてくれる本でした。変化の多い「これからの社会」を生きるビジネスマンのみなさんに、ぜひ読んで欲しいと思います。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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