『驚異の未来生物: 人類が消えた1000万年後の世界』2017/8/23
マルク・ブレー (著), セバスティアン・ステイエ (著), 森 健人 (監修), & 1 その他
人類が消えた1000万年後の未来を生きる生物たちの世界を、古生物学者とCGクリエイターがタッグを組んで描いた本です。
古生物学者が科学的知識をもとに未来の生物進化を想像しているので、かなりの説得力を感じます。「実際にはありえない可能性が高い」未来の世界ですが(笑)、ハイクオリティCGと臨場感あふれるストーリーのおかげで、生物図鑑を見ているような気がします。壮大な知的SFエンターテインメント作品です☆
なぜ「1000万年後の未来」を舞台にしたかというと、地質学的に見て1000万年後の世界は、現代から遠すぎることも近すぎることないので、現在とはかなり見た目や性質が異なる生物でありながら、依然として同じグループ(植物、節足動物、脊椎動物など)に属するものを提示できるからだそうです。
1000万年後の世界でも、地球全体の大陸の形状はそれほど変わりませんが、プレートの動きのために、アフリカプレートはゆっくり北に移動しつづけてユーラアシアプレートを押し、ヨーロッパとアフリカがつながった「ユーラフリカ」が出来て、地中海はほぼ消滅してしまうそうです。この地方は四季がよりいっそうはっきりするのだとか(夏はより暑く、冬は寒くなる)。
現在、私たち人類が排出している二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスは、大気の温暖化を促進し、海流の循環の調子が変わってしまいます。さらに、私たちが排出している二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物によって、海は酸性化しています。酸性度が非常に高い海では、炭酸カルシウムが溶けてしまいます。そのため微細プランクトンなどは姿を消すと予想されているそうです。こうしてまったく新しい環境が出来上がっていくそうです。
現在想定されている6回目の大量絶滅は、最初に、光に依存している生物に影響を与えると考えられ、深海生物のほうがよりいっそう大きな発展をとげることが想像される……こういう理由で、この本は、まず深海の生き物から始まります。
最初に登場するのは、「ステゴイクチス・ルミノスス」。頭に発光するヒゲをつけ、とげのある硬い殻でおおわれているナマズのような深海魚です。本物みたいなCG画像のイラストがあるだけでなく、図鑑のような「データファイル」も掲載されているので、まるで本当の生物図鑑のようです(笑)。さらに続くのは、巨大なオタマジャクシ「ベントギリヌス・ギガンテウス」! 魚竜のようなペンギン「ネオピゴセリス・デンタトゥス」! ……すごくリアル感がありますが、みんな「可愛くないコたちばっかりです(涙)」……これが1000万年後の未来か……人類がいなくなると、「可愛い」必要性もなくなるのでしょうか……。
こんな感じで、未来の陸上(マングローブの森、新しい大陸)へと続いていきます。肉食恐竜(ティラノサウルス)のようなオウム「ティラノルニス・レックス」まで登場してきますが、実は、大型哺乳類は絶滅すると予想しているので、それまで大型哺乳類がしめていた生態的地位を、新しく地上で暮らすようになった鳥類が獲得すると予測しているのです。だからこの本には、怖そうな鳥がいっぱい出て来るのに、みんな飛びません。空を飛ぶのは、曲芸飛行をするコウモリ「ヴェロキプテルス・アクロバトゥス」などのコウモリと、昆虫くらいのようです。
1000万年後の未来世界を予想しているはずなのに、なんだかジュラシック・パークみたいです。生物科学的予想をしているのが、古生物学者だからでしょうか?(笑)。
こういう未来の生物の想像(創造)は、まずどの生物グループが生き残るかを想定し、その生物が属しているグループに課せられた制約を守りながら骨格を描いた後、筋肉、皮膚、羽毛を付け加えていくそうです。こうして、骨学や生理学や習性にもとづいた新しい生物が誕生するのだとか。
さて、地球はこれまで5回の大量絶滅を経験していますが、「進化はおだやかな大河ではなく」、放散(急激な種の増加)と大量絶滅をくり返してきたようです。今後に起こる6回目も、これまでと同じような大量絶滅になる可能性が高く、1000万年後の生物多様性は、量的には現在と同じくらいでも、新しい種が相当多く出現するだろうと予想されています。……この本が描いているように、本当に1000万年後の未来には、人類は絶滅しているのでしょうか? 機械人間(AI)が生き残っているのではないでしょうか? (なお、この本には機械人間(AI)に関する予想はまったくありません)
……かなり荒唐無稽の未来世界のようにも見えますが、それなりの説得力も感じさせられる不思議な本でした。あまりにも遠い未来過ぎて不確定事項が多すぎるせいか、「科学的知識」の面では期待したほど勉強にはなりませんでしたが(汗)、興味深いSFとして楽しく読むことが出来ました。SF好きの方や生物に興味のある方は、ぜひ読んでみてください☆
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