『進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義』2016/12/20
リチャード・ドーキンス (著), 吉成真由美 (編集, 翻訳)

 ベストセラー『利己的な遺伝子』で有名なドーキンスさんが、「ドーキンス進化論」を分かりやすく教えてくれる本です☆
 1991年にドーキンスさんが行った、英国王立研究所の青少年向けクリスマス・レクチャー(全5回)の講義の再録ですが、現在でも内容の古さを感じさせません。進化の時間スケールからいったら、20年なんて、あっという間だからでしょうか(笑)。
 しかも講義の対象が青少年向けなので、映像や模型をつかって、すごく分かりやすく説明されています。青少年だけでなく、大人にとっても、ドーキンス進化論への格好の入門書になると思います。
 なお、第1章から第5章は、1991年の講義(全5回)を再録したものですが、第6章に、この本の翻訳を行った吉成さんが2009年に行ったドーキンスさんへのインタビューも収録されていますし、2014年の吉成さんの「編・訳者あとがき」もあります。この「あとがき」で吉成さんは、「20年前におこなわれたこのレクチャーが、内容的にはほとんど手を加える必要がないどころか、かえってますます時代に強く訴えかけるものになっているということ、それはとりもなおさずドーキンスの慧眼、その洞察力を証明する結果となっている」と語っています。
 ドーキンスさんが講義で語る「科学」への考え方も、とても参考になります。世界には、キリスト教、ヒンズー教などのさまざまな創世記がありますが、ドーキンスさんは、「それぞれすべてが正しいということはありえない。しかも、たまたまある国に生まれたために、単にその国の人々が信じているものを信じるというのはおかしな話です。」と言います。そして、「成長するということは、一見説明しているようにみえて実際には何も説明していない「超自然な解説」というものに逃げてしまわずに、実際宇宙がどのようになっているかを知ろうと地道に努力を積み重ねていることを意味するのです。」とも言っています。
 人間には想像力があるので、現時点では科学的に説明不可能な超自然現象をも、自分の世界の中で説明したいという欲求のあまり「超自然な解説」まで受け入れてしまうのかもしれないけれど、現時点で科学的に解明できることと、できないことをきちんと区別して、まだ解明されていないことは、「解明されていない」こととして受け止め、解明するよう努力するべきなんだろうな、と感じました。
 さて、この本では、宇宙のなかで我々が生きていること、人間がデザインしたものと自然がデザインしたものの違い、進化はゆっくり着実にすすむこと、人間と動物との違い、脳が世界の仮想モデルを構築すること、などについてのドーキンスさんの考えが、模型などを使って、すごく分かりやすく説明されていきます。難しい内容なのに、驚くほど、どんどん理解できていきます(理解したような気持ちになります)。学校でも、こんな講義をぜひ聞いてみたい☆ と思えるような内容でした。この本が「ドーキンス進化論」の入門書として、とても役に立つのはもちろんのこと、学校で生徒に教えている方、仕事でプレゼンテーションを行う方にとっては、この「講義スタイル」も、とても参考になるのではないでしょうか。
 いろいろな意味で、読んで損はない、素晴らしい本だと思います☆
 ※なお、私が実際に読んだのは、『進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義 (ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス) 単行本(2014/12/19)』でしたが、ここでは、より新しくて廉価な文庫本版の方を紹介しています。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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