『帰ってきた! 日本全国化石採集の旅―化石が僕をはなさない』2018/12/15
大八木和久 (著)

北海道から九州まで、化石採集箇所のべ2,800カ所、標本数は8,000点以上。化石採集家の大八木さんが、50周年を迎えた化石採集の旅のなかで出合った採集地や化石探しの極意、化石仲間との交流を、写真とともにフルカラーで紹介してくれる本です。
ちなみに表紙の写真は、ホオジロザメの歯の化石だそうです。周囲のぎざぎざまで残っているきれいな化石ですね。でも……歯の化石なら、いっぺんに並んだ状態で出ないものなのでしょうか? 大八木さんはサメの歯が好きなようで、あちこちで採取しているようなのに、いつも数個どまりのようですが……抜け落ちたサメの歯なんでしょうか?
さて、私は子どもの頃、デパートでアンモナイトの化石が売られているのを見て、すごく欲しかったのに高価で買えなかった……という残念な経験をしたことがあるので、化石には憧れがあります。でも結局は、博物館などで化石を眺めるだけで、化石を所有してはいません。今では、それでよかったのだ、と思っています。なぜなら、化石を所有していても、眺めるのはごく限られた人だけですが、博物館や学校にあれば、多くの人が眺めたり研究したりできるからです。
だからこの本も、すごく興味深く読ませていただきましたが、最初はなんとなく、アマチュア化石採集家への、もやもやした気持ちがありました。
でも読み終わる頃には、化石採集って本当に大変なんだなー!と感心させられてしまいました。
なぜなら、化石はいつも道端に転がっているわけではなく、「それらしい」と感じた石を割って初めて見つけることの方が多いからです。しかも見事なアンモナイトなどの化石は40キロぐらいあって……それを山奥から1時間ぐらいかけて車まで運ばなくてはならないこともあるようです。これは……相当な情熱と頑健な体力がないと、とても出来ないことですね。
そして数多くの化石をわりと簡単に採取できるのは「道路工事」や「土砂崩れ」現場のようなのですが、「道路工事」現場などは、埋め戻されてコンクリートの下になってしまうよりは、アマチュア化石採集家の方たちに採取されたほうが、ずーっといいのかも、とまで思ってしまいました。
この本には、「北海道・上猿払のキダリス」、「岡山県・大佐の巨大ビカリア」、「福井県・貝皿のアンモナイト」など、全国57か所での化石採集が、写真と採取状況の記録とともに紹介されています。化石採集に興味のある方にとっては、とても有用な情報が満載なのではないでしょうか。
また「北海道・三毛別川のリヌパルス」では、石からクリーニングしたリヌパルス(エビ)の見事な化石標本を見ることができます。このように、いくつかの化石のクリーニングについても、大八木さんの方法が紹介されているので、標本づくりの参考にもなりそうです。
さて、大八木さんは、「後書き」で、「化石採集家による化石のための博物館」を提案なさっていますが、それが実現すると、本当にいいですね。今後、化石採集をされる方は、ぜひ「現場写真とGPSなどの位置情報」を化石とともに記録・保存して欲しいと思います。日本列島の成り立ちの秘密など、他の人達の研究に役立てるためにも……。
この本は写真が豊富で眺めるだけでも楽しめるので、化石好きの方はもちろん、自然観察が好きな方も読んでみてください。
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