『間違いだらけのメンタルヘルス―「心」が病気になる前に、打つ手はないのか』2008/4/1
久保田 浩也 (著)

関係者みんなが努力をしていても改善が見られない「間違いだらけのメンタルヘルス活動」につついて考察するとともに、心をしなやかにする「心の体操」の仕方を教えてくれる本です。
自殺者が減らない日本では、「心の病」に関心が集まっていますが、問題の改善はあまり進んでいません。そこにはさまざまな原因があると、久保田さんは言います。
例えば、よく言われる「心の病の早期発見・早期治療が一番」は、「非現実的で大問題」なのだそうです。なぜなら周囲の人は、誰も気づいてくれないから。早期であればあるほど微妙な変化しかないし、家族はいつも身近で生活しているので少しずつの変化に気づきにくい上に、職場の上司や仲間は、精神的問題についてはズブの素人なのです。しかもたとえ誰かが気づいて、精神科受診のアドバイスをしたとしても、本人がそれを素直に受け止めないこともあるのだとか。異変に気づいた久保田さんがアドバイスをしてあげた時、その人は、「そんな目で私を、今まで見ていたのですか」という反応を示したそうです。こんなふうに、かえって人間関係がギクシャクしてしまうことも……。
また、アンケート式の健康調査を続けてみたことがあったそうですが、これも思うように効果があがらなかったとか。……メンタルヘルスには、確かにいろんな問題があるようです。
それでも、この本を読むと、いくつかの具体的なアドバイスももらえました。
「行き詰ったらやるべき原則があります。とことん悩む。横道にそれて道草を食う。周囲をボンヤリ見渡してみる。他のことと置き換えてみる。まったく関係のないことに夢中になる。歴史を見る。ことわざを読む。そして多くの人に教えてもらう。そうこうしているうちに、きっと道が開けます。」
「理想的な人間などこの世には一人もいない。誰もが長短併せ持つ人間ですし、そのときどきの状態、その人の健康・財産・家族・立場・経験・知識・年齢・地位・権力などの状態で、人の言動は大きく変化します。」
そして「心を健やかに保つ」ようにするためには、「水泳と同じようにトレーニングするしかない」ということを教えてくれます。
具体的には、「心の体操」(心の柔軟体操)をすることで、実際に、一部の問題を解決することが出来たそうです。「心の体操」というと、脳トレみたいなことをするのかとちょっと思ってしまいましたが、どちらかというと「簡単な身体の体操(ストレッチ)」をするようでした。
まず椅子に深く座って、身体を締め付けているものを緩めてから「心の体操」を始めます。
最初に腹式深呼吸をして、顔、首、肩、胴、そして全体を脱力させていきます。全体脱力したら、両手、両足、お腹に「ボンヤリ」注意をむけ、ゆっくり呼吸(20回程度)します。そして最後に復元運動として、背筋を伸ばし、身体の各部をそれぞれ伸ばしてから脱力させます。
これが「心の体操」の概要です(もちろん本にはもっと詳細で具体的な方法が記載されています)。「心の体操」の基本は「休息の方法」なので、無理をしたり我慢したりして行うものではなく、嫌ならすぐに中止してもいいのだとか。
この「心の体操」を継続したときの長期的効果としては、寝つきがよくなる、イライラ&クヨクヨが気にならなくなる、アガリがなくなる、頭痛&下痢などの不調感がなくなる、人間関係が楽になる、など、いろいろあるそうです。「心の体操」はすごく簡単で、「身体の体操(ストレッチ)を行う瞑想」という感じなので、少なくとも害はないでしょうし、これを行うことで、疲れた精神(神経)を休めることが出来そうな気がします。
パソコン仕事などが多い方は、座りっぱなしの同じ姿勢をしていることが多そうな気がしますので、昼休み時間などを利用して、この「心の体操」をすると、心の健康だけでなく、身体の健康にも役立つかもしれません。「心の体操」は座った姿勢で出来るので、悪目立ちせず、気軽に出来そうだし……。
ストレスなどで悩んでいる方は、この本を読んで、「心の体操」をしてみてください。何か、改善できることがあるかもしれません。
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