『図解でわかる ホモ・サピエンスの秘密』2017/5/26
インフォビジュアル研究所 (著)

最新知見をもとにひも解く人類700万年史です。
豊富な図やイラストをもとに次の20テーマで簡単に解説してくれます。
1 私たちはどこから来たのか
2 ネアンデルタール vs ホモ・サピエンス
3 獲得した思考の力
4 豊かな狩猟採集生活
5 農業革命の光と影
6 宗教という想像世界の始まり
7 想像世界の秩序「ヒエラルキー」
8 想像世界の秩序「貨幣」
9 想像世界の秩序「国家」
10 想像世界の拡大「帝国」
11 帝国システムの道具「数」
12 帝国システムの道具「法律」
13 帝国システムの道具「硬貨」
14 ヨーロッパ世界拡大の武器「信用創造」
15 ヨーロッパ世界拡大の武器「資本」
16 ヨーロッパ世界拡大の武器「法人」
17 ヨーロッパ世界拡大の武器「略奪」
18 ヨーロッパ世界拡大の武器「株式会社」
19 ホモ・サピエンスの20世紀
20 人類の幸福とは

ベストセラーとなったユヴァル・ノア・ハラリさんの『サピエンス全史』など、最近は人類史の本が多数発売されていますが、この本は、『サピエンス全史』を中心に、最近の人類史をまとめて分かりやすく解説してくれたもののようです。そのせいか、記事を読むと、ああ、これって『サピエンス全史』や、NHKスペシャル(番組)で見た内容と同じだなーという既視感に満ちていました(笑)。悪い意味ではなく、まとめて総復習させてもらえたような気がします。
ただ……最近、いろいろと発表されてきた人類に関する知見を、無批判に紹介している部分もあって、そこが気になりました。特に疑問に感じたのは、「2 ネアンデルタール vs ホモ・サピエンス」の「脳の機能の違いがホモ・サピエンスを生き残らせた!?」という項目。ネアンデルタールよりもホモ・サピエンスの方が、協働作業能力の点で優れていたので、競争に勝ち抜いたという話まではそれなりに納得できるとしても、「ネアンデルタールとホモ・サピエンスの脳の働きが違っていた」という仮説に過ぎない話(事実として確認のしようもない話)を、事実と誤認されかねない感じにイラスト解説しているのは、問題ではないかと思います。記事をよく読めば「仮説」と読み取れますが、そもそもただの「仮説にすぎない話」を、このように詳細にイラスト解説して何になるのでしょうか? このように総合的な図説は「歴史の参考書」として使われることが多いと思うので、できるかぎり「事実と確認されたもの」だけを扱うべきではないかと思います。
ということで、一部疑問に感じた部分もありましたが、人類に関する最近の知見(意見)を総合的にまとめてくれた本として、参考になる部分も多かったように思います。子供向けの社会科副読本として使うのには問題があると思いますが、人類史に興味のある大人の方の参考書としては役に立つと思いますので、読んでみてください。
なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。