『儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場の秘密』2008/3/20
古芝 保治 (著)

バブル崩壊から赤字経営に苦しんでいた町工場が、「ゴミゼロ化」をきっかけに5年で黒字転換……この本は、大阪の金型メーカー・枚岡合金工具が、「掃除」を徹底させることで、汚く乱雑だった工場を、プラスの連鎖を生み出す工場に変えた手法について、すごく具体的に教えてくれます。
実は「ゴミゼロ化」を始める前の枚岡合金工具は、危機的な状況にあったそうです。創業者の社長が脳出血で倒れた後、バブルが崩壊、注文数が半減したために採算を度外視した注文まで受注するようになり、働いても儲からない悪循環が続くなか、息子さんが会社を継ぎました。経費削減、社長報酬などの減棒を行っても赤字は埋まらない……新社長は苦しみます。
なんとかしようと経営の勉強会に参加して、枚岡合金工具と同じような多品種少量生産を行っているタナカテックの工場見学をした新社長は、そこで衝撃を受けました。タナカテックは、アナログな「受注負荷計画表」で生産管理をしていましたが、一目で作業状況が分かり、モノが効率的に配置され、職場は整理整頓されてピカピカ……そうか、「経営状態は目に見えるもの」なのだ!
社長は決心しました、「徹底した3S(整理・整頓・清掃)活動」に賭けてみよう」と。
その結果は……赤字続きの会社が、たちまち黒字回復することに!
黒字化の直接の原因として、社長は「利益率の低い仕事を捨てたこと」をあげています。すべての注文をABCDEの5段階に分類して、利益のあがらない仕事を断ることにしたそうです。
でも黒字回復の真の原動力は、「ゴミゼロ化」活動にあったのだとか。整理整頓することで、「道具探し」などに費やしていた無駄な時間を、より生産性の高い仕事にあてることが出来るようになっただけでなく、社員のマインドが変化したことで、プラスの連鎖が起きるようになったそうです。
この本は、そんな『儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場の秘密』を、とても具体的に教えてくれます。
例えば、「ゴミゼロ化」のために最初に不要な物を捨てたそうですが、それに利用したのが「6か月使っていないモノは、例外なく捨てる」ルール。すべての備品に赤いシールを貼って、使ったときに剥がすことにして、6か月後に赤いシールが残っている(使用していない)ものを捨てたそうです。
また、朝礼に10分の床磨きを組み込んで、工場内の一つのブロックを社員全員で丁寧に磨くことにしたのですが、工場がきれいになるだけでなく、同じ場所をみんなで掃除することで、「他の人の担当箇所は汚い」などの無用な軋轢を生むこともなく、社員の心を一つにするのにとても役に立ったようです。
さらに、整理整頓でどんどん改善が進むようになった工場を無償で見学できるようにしたことで、社員のモチベーションがもっと上がるようになったのだとか。しかもこれは、営業にまでつながったそうです! 整理整頓された工場、生き生きと働く社員の姿は、製品への信頼感にもつながり、最高のセールスマン&ショールームになる……なるほど、これは凄いですね!
「ゴミゼロ化」で黒字回復……整理整頓の本当の力は、社員のマインドを変えることにあるようです。
この本は、工場の「ゴミゼロ化(整理整頓清掃)」の方法を、本当に具体的に写真入りで教えてくれます(100円ショップのグッズやペットボトルを活用した整理棚なども見ることが出来ます)。どんな工場でも、家庭でもすぐに真似することが出来る整理整頓のワザが満載。社長や社員みんなが知恵をしぼって作った整理棚の写真や、チェックリストを、惜しみなく公開してくれています(もちろん、この記事で紹介した以外にもたくさんの事例が掲載されています)。
誰でも出来るようなことから一歩を踏み出せるので、悪循環の赤字状態や暗い職場に悩んでいる方は、ぜひこの工場の真似をしてみてください。社員一人一人のちょっとした努力で、会社全体を良い方向に変えることが出来るかもしれません☆