『イルミネイチャー からだのなかを大冒険』2018/2/16
ケイト・デイヴィス (著), カルノフスキー (イラスト), 小林美幸 (翻訳)

3色のマジックレンズをのぞいて、人間の身体の中を透視することが出来る絵本です。
絵本の表紙の裏に、「赤・緑・青」の3色のマジックレンズがついています。絵本のページには、表紙と同じような人体模型図イラストが、赤・黄・青の三色で描かれていて、これに3色のマジックレンズをあてると……あら不思議☆ それぞれ違ったものが見えてくるのです。
「赤いレンズ」をのぞくと骨を観察できて、「緑のレンズ」をのぞくと筋肉が、「青いレンズ」をのぞくと内臓・器官・血管が観察できて、人体の驚くべき構造と美しい造形がみごとに浮かびあがる……という、とても不思議な絵本なのです。
人間の顔の部分を見ると、本当に魔法のようなことが起こります。赤いレンズをあてた部分には「骸骨の目の部分の穴」しか見えないのに、それを横にずらして同じ場所を緑のレンズごしに見ると……「目(眼球)」が見えてくるのです! これ、本当にビックリしてしまいます。赤いレンズでは赤いインクで描かれた線が見えなくなり、緑では青+黄の線が見えなくなるからなのだと頭では想像できても、それが実際に、そのように見えると、なんだか……すごく意外で驚かされるのです(笑)。
しかも白黒の人体模型図をつかった生物学的な解説もあるので、人体の各部位についての大切なポイントや、それぞれの骨や筋肉、器官のはたらきについても学べます。

かなり珍しい技術を使った「楽しく学べる」不思議絵本です。今まで、赤や緑のレンズをつかった絵本というと、違う色のついた眼鏡を使って「両目」で見ると、なぜか立体に見えるという仕組みの絵本が多かったのですが、これは「片目」で見る「3色マジックレンズ」を使います。別々の色を通して見ると、同じものを見ているはずなのに、まったく違うものが見えてくるという、すごく不思議な絵本で、本当に魔法のようです☆
ところでこの「3色マジックレンズ」、赤と緑はかなり透明度が高くて、ページに当てただけでも、その下のものが違って見えるのですが、青だけはかなり濃くて、白いページに当ててみても、「真っ黒」に見えてしまうだけなのです。だからウィンクが出来る人でないと、3色マジックレンズが使いにくいと思います。
また、青いレンズを通して見えるのは内蔵などの臓器なのですが、かなり暗く見えるので、細かい部分がすごく見にくいとも感じました。舌などの臓器を「ブルーレンズで観察しよう」という指示があるのですが……私には、どれが舌なのかよく分かりませんでした(汗)。解説イラストのページは、透視室のイラストと同じイラストを使って説明してくれた方が分かりやすかったのでは? と少し残念に思いました。
……ということで、「ものすごくお勧め」とは言えないのですが(汗)、「3色マジックレンズ」を通して見ると、それぞれ「骨」、「筋肉」、「臓器」という全く別のものが見えるのも、本当に「レントゲン写真」を見ているみたいな感じで、研究者になったような気分が味わえますし、どうしてこんなことが起こるのか? を考えてみることも、色を理解することに役立つと思います。すごく勉強になる「楽しくて、ためになる」絵本でした☆
この絵本を楽しむためには、「3色マジックレンズ」がどうしても必要ですが、ウィンクが出来ないお子さんの場合は、カラーセロハンやカラーアクリル板を利用してもいいかもしれません。赤・緑・青のセロハンなどを通して見ると、それなりに「骨」「筋肉」「臓器」を見ることが出来ました(ただしセロハンは少し色が薄いので、「3色マジックレンズ」ほど効果的には見えませんでしたが……)。
とても不思議な「学べる」絵本です。科学好きの方に、特にお勧めします。